教師:お~♪、おはよう! 元気か?
生徒:はい。それにしてもいつも先生は楽しそうですね。ちょっとうらやましい。
教師:ははは。そんなにいつもいつも楽しく過ごしているわけではないぞ。
生徒:僕も早く大人になって仕事して楽しく過ごしたいです。
教師:大人がみんな楽しく過ごしているわけでもないぞ。悩みを抱えている人も多いんだよ。
生徒:そうですか。まあ確かに皆がみんな楽しいわけではないかもしれませんが、先生は楽しそうですよね。
教師:ちょっとしたコツがあるんだよ。毎日を過ごす上でのね。
生徒:毎日なんて、退屈だよ。いつもおんなじことの繰り返しばっかり。朝起きて、ご飯を食べて、� ��校に行って・・。
教師:そういうことじゃないんだなあ。確かに毎日やっていることは同じかもしれないけどね。
生徒:おんなじことをやっていて何が楽しいんですか?
教師:ははは。
生徒:意味がわかんないよ。
教師:じゃあさ、こんなふうに考えてみようよ。
生徒:どんなふう?
教師:例えばさ、風邪って引いたら治りにくいよね?
生徒:うん。
教師:だからみんな風邪を引かないように気をつけているんだよね。うがい手洗いなどの予防をしたりね。
生徒:うん。それが?
教師:もちろんうがい手洗いは大切なんだけどね、風邪が治りにくいっていうのは当たり前だよね。
生徒:そうだよ。だから先生たちはうがい手洗いをしろっていつも口をすっぱくして言ってるじ� �ん!
教師:風邪が治りにくいのは事実?
生徒:ああ!もう!なんだかまどろっこしいな!そりゃ事実でしょ!
教師:風邪が治りにくいのは事実だからそれはしかたない。つまり、事実っていうものはもう揺るぎがないから、誰もそれを疑問に思わないんだよ。
生徒:うん。
教師:この事実を少し見方を変えてみるんだ。
生徒:見方を変える??
教師:そう、見方。例えばこんなふうに考えてみる。
生徒:こんなふうって?
教師:なぜ風邪は治りにくいんだろうか?ってね。
生徒:うん?
教師:風邪が治りにくいって断言することは事実を意味している。だけどなぜ風邪は治りにくいんだろうかっていう疑問形にする、つまりそれを問題にして考えてみるんだ。
生徒:はあ。
教師:そうすると今まで当たり前の事実で通っていたものが、とたんに不思議になっていくんだよ。
生徒:ふんふん。
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教師:そうすると、不思議なことっていっぱいあるってことに気がつくんだ。
生徒:へええ。
教師:さっきの風邪の話だってそうでしょ。風邪が治りにくくって引いてしまったらどうしようもないって思っていたら誰も薬をつくろうなんて考えないでしょ。でも、なぜ風邪は治りにくいんだろうかっていう問題に変えることで、こうしたら風邪は治るんじゃないかっていう一つの思い付きが出てくるんだよ。そういったことが新しい薬や風邪の対処法なんかになっていく。
生徒:はは~、なるほど。いつも見ていて当たり前に思えることを一回疑うんだ。そうすると、そのことがどうして成り立っているのかとか、どうするともっと良くな� �んだろうかって考えに変わってくるんだ。
教師:そうそう。それがアイデアなんだよ。世の中にあるたくさんの事実が当たり前のことではなく、それはもしかしたら問題かもしれないって見ていくんだよ。そういう視点が科学的な視点なんだ。そう思うと不思議なことがいっぱいあるでしょ。
生徒:うんうん。
教師:なんでご飯を食べたくなるんだろうね?
生徒:なんでだろ?
教師:なんで人って恋するんだろうね?
生徒:なんでだろう?
教師:なんで君は生まれたんだろうね?
生徒:あれ~??なんでだろう??お父さんとお母さんがいたから当たり前だと思っていたけど、そう言われてみればすごく不思議だ~。
教師:いっぱい不思議なことはあるんだよ。
生徒:確かに確かに。そ� �いえばこの前のテレビで不思議なこと言ってたぞ。
教師:へえ、どんな番組だい?
生徒:NHKの爆笑問題の日本の教養って番組だよ。
教師:君、NHKを見るのかい?意外だな~、ははは。
生徒:何言ってんの、先生。NHKぐらい見るよ。もちろん他のテレビ局も好きだけどね。
教師:ははは。
生徒:そんなことより聞いてよ。その番組の中でね。
教師:うん。
生徒:銀河鉄道の夜の話が出てたんだ。宮沢賢治の。爆笑問題の太田さんがさ、言ってたんだけどね。銀河鉄道の夜に出てくるジョバンニとカンパネルラっているでしょ。あいつらが銀河鉄道に乗っていると女の子と男の子とその二人の家庭教師みたいな人が乗ってくるんだけど知ってる?
教師:もちろん知ってるよ
番号のパターンです、最初のグレード
生徒:その人が神様のところに行かなければ行けないって言って、三人で銀河鉄道を降りようとするのね。でもジョバンニとカンパネルラは降りてほしくないから、もうちょっといっしょに行こうよって言うんだよね。そうすると家庭教師は、神様が待っているから行かなければいけないって言うんだ。ジョバンニたちは言ってほしくないから、そんなの嘘っぱちの神様だって言っちゃうんだ。その人たちの考えている神様と、自分たちの考えている神様は違うっていうことだよね。そのときに爆笑問題の太田さんの解釈はさ、ちょっと詳しく覚えていないからまるっきり一緒の言葉では説明できないんだけど、こんなこと言っていたんだ。自分の信じている� �様以外の神様は信じられないけど、もしこの人と仲良くなったら、この人が信じている神様なら信じられるかもしれない、って。この人を介してってことなんだよね。つまりあいだなんだよ。
教師:うんうん。なるほど。
生徒:すごく納得させられたから、すぐその後に銀河鉄道の夜を読み直したけど、この人が信じている神様なら信じられるなんてことは書いてなかったけどね。
教師:ははは。
生徒:でも、なるほどって思ったのは、結局さ、人って、他の人がいなければ生きていけないでしょ。人と人との関係ってことなんだよね。
教師:その話すごく面白いけど、その中にも不思議なことってない?
生徒:どんなこと?
教師:人って言ったけどさ、結局は人間ってことでしょ。なんで人間って、� �の間って書くんだろうね?
生徒:え?あ、本当だ、なんでだろう?先生、今、辞書持ってる?
教師:電子辞書でいいかい?
生徒:貸して!え~と、にんげんっと。広辞苑では、①人の住む所。世の中。世間。じんかん。②社会的存在として人格を中心に考えたひと。また、その全体。③人物。ひとがら
教師:それだけかい?
生徒:うん。漢和辞典を調べてみようか。間、と。なんかそれらしいもの、ないなあ。
教師:じゃあ、なおのこと不思議だね。
生徒:何で人の間と書くんだろう。
教師:荒川修作って知ってる?
生徒:誰それ?
教師:知らないよね。愛知県出身の芸術家だよ。今はアメリカにいるんだけどね。その人の造った施設で有名なものが岐阜にあるんだけど。
生徒:岐� ��?
教師:そう。養老の滝って知ってるかな?その養老ってところにある養老天命反転地だよ。
ジェームズはどのように表示した
生徒:あ、名前は聞いたことあるよ。お父さんとお母さんが昔行ったって言ってたような気がする。
教師:不思議なところなんだよ。天井に椅子があったり、階段が斜めになってたりしてね。そこの切り閉じの間っていうところは真っ暗闇なんだけど、すごく狭くて人一人がやっと通れるぐらいなんだよ。そこに入ると出口を探すために手探りになる。そのうちに前のほうから人が来ちゃうんだ。人一人が入れるぐらいだからそのままだとぶつかっちゃうでしょ。だから、右によってくださいって、暗闇の中で叫ぶんだよ。そうすると、向こうの人は右ってどっちですか?とか聞いてくるんだ。僕たちはあなたたちの向かって左にいます。だからあなたた ちからしたら右側に行ってくれれば僕らはそっちを通りますから。なんて会話をするんだ。そうするとようやくすれ違える。あなたがいて、わたしがいる、ってことを意識しないと安全に動けないんだ。そんな仕掛けがそこらじゅうにあるテーマパークなんだよ。
生徒:へええ。おもしろい。そういえば、思い出したよ。お父さんとお母さん、そこにふたりで行ってからすごく仲良くなったって言ってたよ。
教師:僕も不思議に思ったよ。そこではカップルがすごく仲良くしているんだよ。彼氏が彼女をエスコートしている。そうしないと危なくて仕方ないから、お互いがお互いの身体を認識しあっているんだ。まさに人と人の間だよ
。
生徒:そうか!だから人間なんだ!僕らは一人では生きていけない。人と人との関� �ってまさに間ってことだよね
。そうかんがえると人間って言葉ってすごく深いね!面白い!
教師:うん。そうだね。貴方がいて私がいるから人間であって、そういう関係が希薄になると人間って言う言い方が正しくなくなりそうだね。生物学的なヒトになるイメージかな。そうだな、まさにカタカナでヒト。
生徒:ちょっと難しいけど、なんとなくわかる気がする。人間って感じではないね、カタカナでヒトだと。
教師:そうだね。日本語の難しさだと思うけど、人間って言葉一つとっても不思議なことがたくさんあるし、考えていくと納得いくこともたくさんあるし、考えることは楽しいね。
生徒:なるほど、先生の言っていた、事実を問題に変えるってことはこういうことなのかな?
教師:そうだよ。ほ� �、楽しいでしょ?ものごとを考えていくことやその解決を見つけることは楽しいことなんだよ。そうやって考えていると、日常生活なんて不思議なことでいっぱいだよ。
生徒:うんうん。なるほど!楽しいね。先生が楽しそうなのは、いつも問題ばかり考えているからなの?
教師:もちろん問題も見つけて、それに関することを考えているからだよ。発見をしていくことは楽しいんだ。科学は問題からはじまるんだよ。
生徒:なるほど、科学は問題からはじまる、か。そうやっていろいろな科学が発達してきたんだね。僕らの生活がこんなに便利になって豊かになったのも科学のおかげだね。
教師:そうだよ。だけど、すべての科学で発達があるわけではないんだ。停滞している分野もあるかもしれない。
生徒:例えば?
教師:良くは分からないけど、何十年も前から変わっていない分野は発達しているとはいえないんじゃないかな。
生徒:うん。そうだね。そうすると、その分野は問題を見つけていないってことかな。
教師:そういう言い方もできるかもしれない。問題を見つけてその問題を解決しようとしていなければ発達は難しいね。例えば、風邪はなぜ治りにくいかってことを事実として受け止めていて、問題としてはまったく見ていないとかね。
生徒:なるほど、そこで風邪の話がまた出てきたんだね。先生が毎日楽しそうにしている理由がわかったし、事実と問題の関係も少しわかったような気がする。
教師:それは良かったね。これからは毎日が退屈なんて思わなくてすむかな?
生徒:うん。
教師:僕は、君がNHKを見ていることにびっくりだよ。ちなみにさっき話をしていた爆笑問題のニッポンの教養は僕も見てるよ。
生徒:え!?そうなの?先生こそ、いつもヘラヘラしているからお笑い番組ばっかり見ているかと思ったよ。
教師:人は見かけによらないな。
生徒:お互い様です!
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