2012年6月2日土曜日

ILO新聞発表−2005年


2005年新聞発表概要(全文は英語)

2005年12月発表分

 質の高い雇用の新規創出、 貧困削減につながっていないグローバル化:ILO報告書、賃金、生産性上昇における格差拡大を示す(英語原文)
    2005年12月9日(金)発表ILO/05/48

 ILOは12月9日に、1999年から2年おきに発行している定期刊行物「主要労働市場指標(KILM・英語版)」第4版を発表しました。KILMは労働市場に関わる20の主な統計指標を用いて、世界の仕事の現状を量的・質的に掘り下げて分析する出版物です。量的指標としては、労働力率、就業人口、非労働力率、雇用弾性値、産業別雇用、労働生産性、失業率、質的指標としては、労働時間、賃金、雇用上の地位、失業期間などが取り上げられています。
 KILM第4版は、経済成長が貧困削減に直結しなくなってきているとして、雇用弾性値から見た経済成長と雇用成長の関係の弱まりを指摘しています。KILMによれば、1995〜99年には、国内総生産(GDP)が1ポイント成長する毎に世界の雇用は合計0.38ポイント伸び� �いたのに対し、1999〜2003年には0.3ポイントに低下したとされます。ソマビアILO事務局長は、「重要なメッセージは、世界の労働者のための雇用と収入の改善が、これまで政策策定の優先事項でなかったということ」であるとして、グローバル化のあり方を変え、ILOが21世紀の活動目標とするまともで人間らしい働き方を意味する「ディーセント・ワーク」をあらゆる経済・社会政策の中心目標に据える必要があり、この報告書はその目標を推進する有用な道具となるだろうと唱えています。
 報告書は、賃金や生産性の世界的な格差の拡大も指摘しています。1990年代には、少ない高技能労働者に対する需要の急増と低学歴労働者に対する需要減などを原因として、世界的に、賃金の伸びは低技能職種よりも高技能職種で高くな� �、結果、技能水準の異なる労働者間の賃金不平等の問題を悪化させたとしています。
 また、労働コストが低い国は通常、生産性水準も低いため、高賃金経済の競争力が他の場所における労働コストの低下に直ちに脅かされることはないと結論づけています。そして、単位労働コストの指標を用いた競争力分析において、欧州連合(EU)15カ国の対米競争力を脅かしている要因は高い労働コストよりも製造業の生産性低下とユーロ高にあるとしています。日本の製造業の単位労働コスト水準は米国だけでなく、EU15カ国と比べても高かったものの、日本の賃金の伸びが鈍化したこと、2005年の円安ドル高傾向、そして製造業の比較生産性向上によって、90年代半ばからこの差は縮小してきているとしています。従業員1人当たりの付加 価値額で測定した労働生産性水準は依然米国が一番高くなっています。韓国の労働生産性も対米比で急上昇を示していますが、90年代初めの急激な賃上げによって単位労働コストも高くなったとしています。
 この他にも、◆女性の労働力率は全世界的に男性に追いついてきているものの、依然女性は生産性が低く、低賃金のパートタイム雇用に従事する割合が高いこと、◆最も深刻な貧困状態にある労働者の比率はアフリカでは上昇しているものの、アジアや中・東欧では低下していること、◆典型的に、若者の失業率は少なくとも中・高年の2倍以上になるものの、ほとんどの国で、若者の非識字率は中・高年より低いため、労働市場に参入する用意はますます整ってきたと推測されること、◆先進国やEUでは、失業者やフルタイ ム雇用を探している非自発的なパートタイム労働者を含む人的資源の不十分な活用が広がっていることなどを報告書は示しています。
 本日発表されたKILMはCD−ROM版で、書籍は来年4月に発行されます。

2005年11月発表分

 2005年世界エイズデーとILO:職場におけるHIV/エイズ予防に向けた努力をもとにした一連の活動を主催(英語原文)
    2005年11月29日(火)発表ILO/05/47

 12月1日の世界エイズデーに際し、ILOはジュネーブの本部及び世界各地で、パネル討議、映画上映、展示など多彩なイベントを通じ、職場におけるHIV(エイズウイルス)/エイズ対策活動を紹介します。ILO本部では当日、HIV/エイズと働く世界ILO計画や国連合同エイズ計画(UNAIDS)の代表などが出席し、働く場におけるエイズへの取り組みを幅広い視点から取り上げるパネル討議が開かれます。
 ソマビアILO事務局長は世界エイズデーに際して発表した声明で、「これは病気の猛威に対する戦いであるだけでなく、差別、不寛容、誤解、恐怖との戦いでもある」として、職場は、情報や教育、ケア、サポートの提供によって人々の生活と生計を保護することができ、エイズ患者・HIV感染者の権利 を保護する上でカギとなり、患者や感染者が長く活発に生活し、生産的に働き続けることができるとの強い希望のメッセージを発することができるため、HIV/エイズとの戦いにおいて職場は戦略的役割を演じなくてはならないと唱えました。
 ILOは働く場における問題に関するその専門知識を基礎に、HIV/エイズに対する世界的運動の中で重要な役割を演じています。2001年に採択した「HIV/エイズと働く世界ILO行動規範」は、職場でHIV/エイズに対処する際の世界的標準となっています。また、今年7月からは1年の任期で、UNAIDSの最高意思決定機関である共同スポンサー委員会の議長を務めています。

 第294回ILO理事会閉幕:ミャンマーの強制労働、公正なグローバル化の推進戦略について討議(英語原文)
    2005年11月18日(金)発表ILO/05/46
 11月3〜18日の日程でジュネーブで開かれた第294回ILO理事会の主な成果は以下の通りです。
  • ミャンマー:ミャンマーの強制労働問題に関しては、状況の悪化に対する深刻な懸念が表明され、在ヤンゴンのILO連絡員に対する脅迫やILO脱退意思の表明など、様々な圧力・威嚇行動を通じ、ILOの立場に影響を与えようとの試みを固く拒絶しました。ILO連絡員などに対する一連の殺害脅迫は特に批判され、連絡員の十分な職務遂行を保障するようミャンマー当局に緊急要請が行われました。会議に出席した政府代表が協力の用意があると示したことに対応し、理事会は2006年3月の理事会次期会合までの時間を利用して、ILOとの効果的な対話を再開するよう伝えました。また、強制労働被害者に代わって救済を求めた人々が逮捕され、刑に処せられている最近の事件についても理事会は懸念を表明し、被 害者を訴追することを止め、それよりも加害者に対する行動を取るよう当局に強く求めました。
  • 結社の自由:理事会の結社の自由委員会には現在128件の案件が提出されていますが、このうち40件が取り上げられました。委員会は、カンボジア、コロンビア、グルジアの案件に特に理事会の注意を喚起しました。
     ラッフルズ・ホテルにおける反組合的差別行為と組合代表に対する使用者の干渉行動が問題になっているカンボジアの案件については、委員会は政府に対し、使用者と協力の上、合法的な組合活動の結果解雇された労働者が賃金を失うことなく速やかに職場復帰できるよう確保することや、組合の権利保護は効率的で執行可能な手続きを伴うべきこと、反組合的差別行為の対象となった全ての労働者が拘束力のある最終決定に至る手続きを利用できることの確保を政府に求めました。理事会に出席し� �政府代表は、解雇された者は既に職場復帰したと発言していますが、委員会では詳細の検討を続ける予定です。
     労働組合役員の殺害や組合活動のための休暇の拒否、労働協約違反、組合指導者や組合員の解雇などが問題となっているコロンビアについては、10月29日にILOのハイレベル三者構成視察団が国内における情報収集を終え、組合活動家に対する暴力が罪に問われない事態が続き、結社の自由が法律上も慣行上も依然制約されているとの認定事実に基づき、現在進められている基本的人権に関する政労使三者間の対話に誠実に従事することや、既存の三者構成機関の迅速な機能再開、そして情報収集等を目的としたILO代表者の国内常駐等を含む勧告を行っています。
     政府による組合の内政干渉、特にグルジア 労働組合合同体(GTUA)の組合財産の全てを国家に引き渡すよう強制措置を講じたことが問題となっているグルジアについては、委員会は政府に対し、押収した全ての組合文書の返却を求めると同時に、政府の反組合的策略、圧力、威嚇を非難しました。また、政府による対話拒否の態度を遺憾とし、建設的な対話を通じて問題解決を図るよう呼びかけました。
     2004年11月の理事会に審査委員会の報告書が提出されたベラルーシに関しては、政府による委員会の勧告実施状況が検討されました。勧告に意味のある効果を与える具体的な措置が全く講じられていない事実が示され、政府に対し、勧告の完全な実施に向けた具体的な措置を講じ、詳しい情報を提供するよう再び要請しました。今年の総会で提案されたように、 来年1月に状況を評価するILOの視察団が同国を訪れる予定です。
     日本については、JR総連の警察による組合活動妨害の申立、全労連による中央労働委員会労働者委員の偏向に関する申立の二つがフォローアップ案件として取り上げられ、申立人及び政府から寄せられた追加情報に留意し、これまでの勧告が繰り返されると共に今後も情報提供を継続することなどが求められました。
  • グローバル化:理事会のグローバル化の社会的側面作業部会では、現在の国際金融制度が企業と労働者に与えている影響、そして国際金融機関を含む国際機関同士の政策における整合性の強化がいかに成長、まともな雇用、投資を刺激するかについて話し合いが行われました。また、今年9月に開かれた国連2005年世界サミットで、ILOが21世紀の活動目標とする、まともで人間らしい働き方を意味する「ディーセント・ワーク目標」が承認された事実が歓迎され、これに基づき、公正なグローバル化と全ての人へのディーセント・ワークに向けた政策の前進という公約を共有するため、2007年にグローバル化政策フォーラムを開催する案が検討され、来年3月の次期理事会会合に事務局長の詳しい提案が出されることとなり ました。
  • その他:この他に、今年の総会で採択された若者の就業に関する決議のフォローアップとして、この分野におけるILOの活動計画が検討されました。また、雇用促進と社会保護の分野におけるILOの活動も検討され、フィリピンにおけるILOの活動を紹介するため、同国のアウグスト・S・サントス国家経済開発長官及びパトリシア・サント・トマス労働雇用長官も出席しました。今年10月に開催予定だった第14回アジア地域会議については、2006年8月29日から9月1日に当初の予定通り釜山(韓国)で開催することを決定しました。また、2003年に開かれた第8回ILO/ユネスコ教員勧告適用合同専門家委員会では、文部科学省による教員の指導力評価制度と勤務評定制度の導入及び実施形態が1966年のILO/ユネ� ��コ教員の地位勧告の規定に反するとして全日本教職員組合(全教)が行った申立が審議されましたが、その後追加提出された情報を元に2005年9月に開かれた合同委員会の中間報告も提出されました。合同委員会は問題解決に向けた当事者間の対話のさらなる確立及び情報の追加提供を求めています。

 米州サミットにおける合意を実行に移す努力をILOは支援、ディーセント・ワークは地域の目標とフアン・ソマビアILO事務局長(英語原文)
    2005年11月9日(水)発表ILO/05/45
 域内34カ国の国家元首・首脳が出席し、11月4〜5日にマルデルプラタ(アルゼンチン)で開かれた第4回米州サミットで採択された宣言及び行動計画は、ディーセント・ワークを創出する積極的な政策の整備を呼びかけています。宣言はILOに対し、2006年4月に開催予定のILO米州地域会議で、サミットの成果を実行する「政府及び政労使三者の行動を検討し」、「(人々と)その仕事をグローバル化の中心」に据える問題を取り上げるよう求めています。また、行動計画では、「より良いより多くの雇用の推進に向けた各国の努力を支え、技術支援を提供すること」をILOに要請しています。
 サミットから戻ったソマビアILO事務局長は、米州サミットは前例のないやり方で、ILOが提唱するまともで人間らしい仕事 を意味するディーセント・ワークの創出を地域の中心的な政策目標に据えることに成功したとして高く評価し、「域内諸国がディーセント・ワークに向けたこの前例のない政治的決意を実現する努力を我々の全能力を傾けて支援する」と述べました。さらに、マルデルプラタ・サミットは地域に住む男女の社会経済状態改善に向けた戦略を設計する新たな機会を開いたと付け加えました。
 中南米・カリブ地域では現在、約1,830万人の都市労働者が失業しており、最近創出された雇用の10のうち7までが零細自営などのインフォーマル経済で創出されたとILOでは推計しています。

 第294回ILO理事会開幕:ミャンマーの労働情勢、ディーセント・ワークを世界の目標とする方法などについて審議(英語原文)
    2005年11月3日(木)発表ILO/05/44
 11月3〜18日の日程でジュネーブで開かれる第294回ILO理事会で予定されている主な審議事項は以下の通りです。
  • ミャンマー:ミャンマーの強制労働問題に関しては、最新の状況と今後の措置について話し合いが行われます。今年6月の総会で、総会の基準適用委員会はILO加盟国政労使に対し、海外直接投資や国有・軍有企業との関係を含み、ミャンマーとの関係を早急に見直し、11月の理事会までに報告するよう求めています。理事会の報告書は、ミャンマーに駐在するILO連絡員が今年8、9月に受けた殺害脅迫や反ILOメディア・キャンペーン及び半公式の民衆集会といった最近の動きは連絡員の職務遂行能力を「著しく阻害した」としています。報告書はまた、10月18〜19日のILOとの会合で、ミャンマー側がILO脱退の意思を表明したことに触れています。ミャンマーは他の選択肢も検討するため、決定の通知が遅� �ているそうで、ILOはまだ正式な脱退通知を受け取っていません。
  • グローバル化:150カ国以上の国家元首・政府首脳が出席し、今年9月に開かれた国連2005年世界サミットでは「公正なグローバル化を強く支持し、完全雇用、生産的な雇用、全ての人へのディーセント・ワークといった諸目標を、ミレニアム開発目標達成努力の一部とする決意」が全会一致で表明されました。理事会のグローバル化の社会的側面作業部会では、グローバル化政策とディーセント・ワークについて論じるフォーラムの設置提案などILOがこの表明を具体的にフォローアップしていく方法が検討されます。作業部会ではこの他に、現在の国際金融制度が企業と労働者に与えている影響、そして成長、まともな雇用、投資に向け、国際金融機関を含む国際機関同士の政策整合が図られるようILOが行うべき提案 についても話し合いが行われる予定です。
  • 若者の雇用:今年の総会で採択された若者の就業に関する決議のフォローアップとして、この分野におけるILOの今後の活動が審議されます。
  • 多国籍企業:ILOは「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」の効果について、定期的なモニタリングを行っていますが、この第8次調査報告が提出され、多国籍企業小委員会で討議されます。宣言は、雇用、訓練、労働・生活条件、労使関係の分野における原則を定め、多国籍企業が経済及び社会の進歩に貢献していくことを奨励するものです。
 この他に結社の自由委員会の最新の報告書も審議されます。

 ILO事務局長、第4回米州サミットに出席:ディーセント・ワークの創出は政治的課題(英語原文)
    2005年11月3日(木)発表ILO/05/43
 ソマビアILO事務局長は、11月4〜5日にマルデルプラタ(アルゼンチン)で開かれる第4回米州サミット出席に先立ち、3日に「より多くのより良質の雇用の創出は統治、民主的開発、人間の安全保障に影響する政治上の大きな課題になってきている」と語りました。サミットには米州34カ国の指導者が出席し、「貧困と闘い、民主的統治を強化するための雇用創出」をテーマに話し合いを行います。ILOが10月に発表した「労働概観2005年版(Panorama laboral 2005・英/西語)」は、中南米の都市失業率は2005年半ばに9.6%となり、2003年の11.1%より低下したとしています。ソマビア事務局長は、「この数字には元気づけられるが、直面している課題は依然巨大」とし、より多くのより良質の雇用の創出の推進に向けマルデルプラタで行われる約束が果たされるようILOは諸国を支援していくと語りました。

2005年10月発表分

 世界の繊維・衣料産業、 MFA後の雇用に対する影響についてILOに新たな役割を求める(英語原文)
    2005年10月27日(木)発表ILO/05/42


ナイジェリアは1984年にナミビアの独立にどのような役割を果たしてきました
 多国間繊維取り決め(MFA)の段階的撤廃後初めて、繊維・衣料品の主要な生産国及び消費国の政府及び労使代表が出席し、MFAの段階的撤廃について論じ、それが雇用、企業、そして繊維・衣料品のグローバル・サプライ・チェーン(世界規模の供給網)に与えた影響に対処する措置を提案するため、10月24日からジュネーブで開かれていた「MFA後の環境における繊維と衣料の公正なグローバル化の推進に関する三者構成会議」は、MFA後の環境で繊維・衣料産業が直面している革命的事態への取り組みにおいて、ILOが主導的役割を演じることを求める結論を採択して26日に閉幕しました。
 数十万の企業と約4,000万人の労働者が関与し、年間総売上高3,500億ドル規模のこの業界における社会的対応策の世界規模での調� ��並びにMFAの段階的撤廃に対する協調対応の一環としての技能開発プロジェクトその他の措置に対する支援をILOは求められました。業界の調整策に対するILOの支援は、1)管理職を含む関連部門労働者の技能開発及び労働者の就業能力向上に向けた大きな動きに対する支援、2)より質が高く、より最新の雇用関連情報及び中核的国際労働基準遵守に係わる詳しい情報を含む国際的な情報分析サービスの新たな開発、3)ILOの中核的労働基準の遵守・実施の用意がある輸出国から要望があればその遵守・是正努力を支援すること、4)繊維・衣料品の需給の流れにおける生産側と購買側の政府・労使団体、関連する国際機関その他の団体同士の対話のための社会的責任国際フォーラムの開設といった四つの主な要素を含む� �とが提案されています。
 また、先進国に対しては供給国における国際労働基準遵守努力を支援し、途上国・後発途上国に技術支援を提供すること、そして社会的責任のある従業員リストラ策の実施を促進すること、途上国に対しては競争力の改善努力とディーセント・ワークの推進を結びつけた戦略の採用、特にMFA後の環境における社会・経済的側面を監視する政労使三者構成の全国的機関の設置、後発途上国に対しては繊維・衣料産業内外の労働者の技能及び就業能力向上に向けた訓練・再訓練計画の開発を呼びかけ、ILOに対してはそういった努力を支援するよう求めました。

 地震によるパキスタンの雇用喪失は約110万(英語原文)
    2005年10月17日(月)発表ILO/05/41
 ILOは10月17日、去る10月8日に南アジアで発生した大地震の結果、北西辺境州(NWFP)とパキスタン側カシミールを含むパキスタンでは、少なくとも110万人の雇用が失われた可能性があるとする初期影響評価結果を発表しました。加えて、被災地はパキスタンでも最も貧しい地域にあり、地震発生時における推計約240万人の総就業人口中200万人以上の労働者とその家族が1日1人当たり2ドル未満の貧困線以下の暮らしをしていたとし、短期的な雇用の喪失でも既に極端な貧困を発生させている危険性を指摘しています。
 地震前の被災地における就業者1人当たりの平均扶養家族数は2人以上であったため、110万人の失業はさらに240万人(その半数以上が15歳未満と推計されます)の生計に影響を与えていることを意味すると しています。そして、現在仕事をなくした被災住民の推計40%以上が従事していた農村経済の再生が緊急課題であるとしています。また、都市部のほとんどの住民が従事していたインフォーマル経済も破壊されたため、この再生に向けた最低限の資産の再建も緊急の支援を必要とするとしています。
 被災地住民のニーズに対応するため、ILOは現在進行中の救援努力後に実施が必要となる復旧・再建計画に、新規雇用その他の所得を生む機会の創出を目指した計画を組み込むことを提言しています。これには◇再建努力の過程で生じる雇用に関する情報とそのための短期的な訓練を提供する雇用支援サービス、◇農村部及び都市部における小規模事業や所得創出資産の再建に向けた金融・制度的なサポート、◇緊急に必要な基本的サ ービスの供給に向け、海外からの送金を含む外部金融支援導入経路の整備、◇以上の活動を確保できるような制度メカニズムの構築が含まれます。これらの要素を含む提案は、既に国連が10月11日に発表した緊急資金要請に含まれています。

 南アジア地震についてのソマビアILO事務局長声明(英語原文)
    2005年10月11日(火)発表ILO/05/40
 去る10月8日にパキスタン北部で発生し、パキスタン、アフガニスタン、インドに被害を及ぼした大地震に対し、ソマビアILO事務局長は、ILOの衷心よりの弔意と連帯を示すと共に、ILOでは各国当局と協力し、地域の復旧、生活の再建、希望の回復に向け、被災家族と地域社会への支援における自らの役割を果たす用意があることを表明した声明を発表しました。また、無数の人々の暮らしが破壊されている事態に言及し、ILOでは既に各国当局や国連諸機関の救済努力支援活動に加わり、ニーズ評価、基盤構造の復旧・再建、住宅供給、地域経済活動の再活性化、雇用・生計プログラムに参加しており、人道支援・再建努力の進行と共に、これらの事業が雇用集約的戦略に統合され、雇用創出及び生計再建に確実につなが� �よう努力するとの決意を示しました。

 繊維及び衣料品の国際貿易に関する幅広い話し合いの機会をILOが主催:MFAの段階的撤廃に対する戦略的政策対応について、企業、労働者、政府の代表が討議(英語原文)
    2005年10月11日(火)発表ILO/05/39
 来る2005年10月24〜26日に、ジュネーブで開かれる多国間繊維取り決め(MFA)後の環境における繊維と衣料の公正なグローバル化の推進に関する三者構成会議では、昨年完了した多国間繊維取り決め(MFA)の段階的撤廃後初めて、繊維・衣料品の主要な生産国及び消費国の政府、労働者、使用者の代表が集い、繊維・衣料貿易の自由化によって発生した事態を検討し、社会的に責任ある方法でこの新たな状況に対処する統合的な戦略について話し合います。
 会議の討議資料としてILOが準備した報告書「MFA後の環境における繊維と衣料の公正なグローバル化の推進(Promoting fair globalization in textiles and clothing in a post-MFA environment・英文)」は、世界の繊維・衣料産業における最新の貿易・雇用情勢を分析し、割当制の廃止が惹起した幅広い懸念の一部は確認されたものの全体像は予想より複雑になっていると結論づけています。予想通りMFA後の最大の受益者は一見中国とインドであるように見えますが(今年1〜4月の中国の繊維・衣料品輸出高は前年同期比18.4%増、今年1〜3月のインドの繊維輸出高は前年同期比28%増)、詳しく見ると中国の輸出成長率は実際には月ごとに低下しており、インドの既製服輸出高も24%減を示しているとされます。一方、敗者となると予測されたアジア一部諸国の成績はそれほど悪くなく、バングラデシュでは衣料品輸出高が2005年1月こそ前年同月より5,200万ドル減となったものの2月には1億5,700万ドル増となり、� ��月もわずかながら前年同月を上回っています。パキスタンの繊維・衣料品輸出高は2005年1〜4月に記録的な水準に達し、この期間の月平均輸出高は前年比22.1%増となっています。
 アジア諸国の好成績に比べ、欧米、アフリカは不調で、欧米諸国の繊維・衣料産業就業者数は、例えば米国では2005年5月に前年同月比6.5%減、欧州連合25カ国では2005年2月に同5%減と、予測通り2004年末から2005年前半にかけて低下しています。2005年1〜3月のアフリカ成長・機会法に基づく繊維・衣料品の対米輸出高は前年同期比25%減となり、中南米でもアジアの競争力向上によって最近得た市場占有率が失われつつあります。
 会議では、ILOがカンボジアで行っている支援プロジェクトや欧州連合の繊維・衣料社会対話委員会の活動など� �競争力向上に向けて各地で取られている斬新な手法も検討される予定です。

2005年9月発表分

 中南米における児童労働撤廃は 大きな経済的利益を生むとILO新刊書(英語原文)
    2005年9月22日(木)発表ILO/05/38

 ILOは2004年初めに、児童労働を世界的に撤廃した場合の経済的な費用と利益の分析を行った報告書「Investing in Every Child, An Economic Study of the Costs and Benefits of Eliminating Child Labour(子ども一人一人への投資:児童労働撤廃の費用便益に関する経済研究・英文)」を発表していますが、この度、同じ方式を中南米19カ国に適用した費用便益分析の結果を発表し、5〜17歳の児童1,970万人が従事すると推計される中南米の児童労働を2006〜25年の20年間で廃絶すること(最悪の形態の児童労働については最初の10年間に廃絶するものと仮定)によって生じる経済的利益は、約1,050億ドルと推計される費用をはるかに上回る3,400億ドルになると推計しています。
 この分析は、昨年コスタリカで開かれた第6回イベリア系アメリカ青少年問題担当閣僚級会合の要請に応え、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)が行ったものです。分析をまとめた報告書「Construir futuro, invertir en la infancia: Estudio económico de los costos y beneficios de erradicar el trabajo infantil en Iberoamérica(未来の構築、子ども時代への投資:イベリア系アメリカにおける児童労働撤廃の費用便益に関する経済研究・西文・79ページ)」は、教育制度の改善や保健医療の向上、最悪の形態の児童労働の撤廃に向けた直接介入活動など今後20年間の児童労働撤廃に必要な投資額は約1,050億ドルに達するものの、教育の向上によって3,390億ドル、健康の改善によって21億ドルの経済的利益が生じると推計しています。ここで経済的利益とは、住民の教育水準の向上、健康状態の改善、そして生産性の増大によって生じるものと定義されています。

 IPECの人間工学的新型織機の発明者が2005年のテック博物館賞を受賞:じゅうたん産業の児童労働削減に貢献する新型織機(英語原文)
    2005年9月21日(水)発表ILO/05/37
 ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)が、成人労働者の労働条件の改善及び所得の増大を通じ、じゅうたん産業における児童労働の削減に寄与するものとして利用している「人間工学的」織機の発明者であるサイード・アワン氏が2005年テック博物館賞を受賞しました。米カリフォルニア州サンホセにあるテック技術革新博物館が設けるこの賞は、新技術の利用または開発を通じて社会に利益する先駆的な発明に毎年送られています。
 ラホール市(パキスタン)にある労働条件・環境改善センター(CIWCE)の所長であるアワン氏は、IPECの依頼を受けじゅうたん産業で働く児童の安全・健康面のリスク評価を行い、何世紀も変わることのなかった織機のデザインがじゅうたん織工たちの間に健康上の大きな問題を発� ��させていることを突き止め、人間工学的織機の発明に至りました。新型織機は既にIPECによって、パキスタン国内3地域30カ所に導入され、成人労働者の健康や生産性の向上につながった結果、時には収入を倍増させ、子どもの労働に対する依存度を低下させ、児童労働の削減に結びつきました。IPECではこの方法を用いて、家族が子どもを働かせるのではなく、学校に通わせるよう導いており、既に約2万6千人の子どものリハビリテーションに成功しています。
 パンジャブ州労働局の一部である労働条件・環境改善センターは1988年に設立され、職場における安全衛生及び職場環境改善に向けた訓練、情報、助言サービスを提供しています。

 業務関連死亡者届出数は全世界的に実態を下回るとILOの報告書(英語原文)
    2005年9月18日(日)発表ILO/05/36
 9月18〜22日に米フロリダ州オーランドにおいて開催される第17回世界労働安全衛生大会において、ILOは労働安全衛生の最新の状況を概説した報告書「ディーセント・ワークとは安全な仕事(Decent Work - Safe Work:・英文・48ページ)」を発表します。報告書は、先進国では業務関連の疾病件数及び死亡者数は幾分減少してきているものの、一部アジア諸国を中心に、届出体制の未整備、急速な経済発展、そしてグローバル化による強い競争圧力を原因として、事故件数、特に死亡事故件数の増大が見られるとし、業務関連の事故や疾病による死亡者数は世界全体で毎年約220万人に達するとします。
 この現状について、ソマビアILO事務局長は、「(ILOが21世紀の活動目標とする)ディーセント・ワークは安全な仕事でなくてはならないが、目標達成への道のりは長い」としています。また、タカラ労働安全衛生・環境計画部長は、十分な安全文化の欠如が多分多くの労働者の死を招いているであろう事実は未統制の開発の高い代償であ� �とし、この傾向を変えるための緊急行動を求めました。
 先進国では業務関連疾病が主要な問題であるのに対し、途上国では事故の危険の方が高く、鉱業、建設業、農業といった産業における事故による死亡者数が多くなっています。また、有害物質は世界全体で毎年推計44万人の労働者の死亡原因となっており、アスベスト(石綿)だけでも年間10万人が死亡していると推計されます。新たなデータによると、男性は事故や肺疾患、業務関連のガンなどで65歳の引退前に亡くなるリスクが高いのに対し、女性の間では業務関連の伝染性疾患(農業関連のマラリアや細菌・ウイルスの感染)、心理社会的要因による不調、長期的な筋骨格障害が多いことが示されています。また、非死亡労働災害にあう確率は若年層(15〜24歳)で高く、死 亡災害や不健康状態は高齢層(55歳超)で高くなっています。しかし、多くの途上国では労働安全衛生の届出制度が十分に整備されておらず、例えば、死亡災害が年間222件と報告されているインドについて、ILOは4万件と推計しているように、途上国では統計は実態のほんの一部しか表していません。
 報告書はまた、心理社会的要因、暴力、アルコールや薬物の影響、ストレス、喫煙、HIV(エイズウイルス)/エイズといった新たに登場してきた問題が世界的に罹患率や死亡率の急上昇をもたらしており、例えば、主としてレストラン、娯楽産業、サービス産業の労働者に影響を与える喫煙は業務関連疾病に基づく死亡件数全体の14%、20万件近くの死亡原因になっていると記しています。
 ILOは業務関連の事故や不健 康状態を予防または削減する前提条件は、国際レベル、地域レベル、全国レベル、企業レベルの各レベルにおける行動であるとします。ILOでは、啓発活動、指針開発、技術支援、知識基盤の構築、国際協力からなる世界戦略を開発し、各国の国内政策開発努力を積極的に支援しています。例えば、アルゼンチンでは政労使三者構成の全国建設業安全委員会が設置され、アイルランドはILOのマネジメント・システムズ・ガイドラインを導入する協定をILOと正式に締結し、日本は今年8月に石綿条約(第162号)を批准し、石綿の全面的な使用禁止を目指しています。

 職場における栄養状態の悪さは 労働者の健康と生産性に悪影響とILO新刊書(英語原文)
    2005年9月15日(木)発表ILO/05/35
 ILOは、来る9月18〜22日に米フロリダ州オーランドにおいて開かれる第17回世界労働安全衛生大会において、職場における栄養問題を扱った新刊「仕事と食:職場における栄養不良、肥満、慢性疾患解決策(Food at work: Workplace solutions for malnutrition, obesity and chronic diseases・英文・448ページ・6,000円・英文概要)」を発表します。
 世界各地の職場における飲食習慣を吟味したILO初の本書は、世界には相当規模の「食物不均衡」が見られ、世界人口の6人に1人(約10億人)が栄養不足状態にある一方で、主として先進国では6人に1人が太り過ぎか肥満状態にあり、不適切な栄養摂取は生産性を最大2割低下させる可能性があると記しています。さらに、職場で栄養状態が改善されれば国の生産性向上につながり、職場における食事計画はわずかな投資で微量栄養素の不足や慢性疾患、肥満を予防することによって、病欠日数や事故の減少といった利益を企業にもたらす可能性があるとしています。
 東南アジアでは鉄欠乏による生産性の損失額が50億ドルに達し、裕福な国では保健医療費全� ��の2〜7%が肥満関連で、米国では企業が保険、有給疾病休暇等の形で支払う肥満関連の経済的費用が127億ドルに達していると推計されます。こういった状況に対し、本書ではブラジルやフランスの食券制度、米国や南アフリカの地元飲食業者と企業の提携、日本のお弁当の例など、世界28カ国の様々な企業から効果的な食事解決策を紹介しています。
 ILOは1956年に、多くの労働者が1日の3分の1または起きている時間の半分を過ごす職場は健康面の介入活動を行うのに適した場であるとの考えのもと、食堂やカフェテリア、その他の給食施設の設置に関するガイドラインを含む福祉施設勧告(第102号)を採択しています。

 第17回世界労働安全衛生大会 (米フロリダ州オーランド・2005年9月18〜22日)−ILO、安全と職場における食物に関する2冊の新刊書を発表(英語原文)
    2005年9月14日(水)発表ILO/05/34
 2005年9月18〜22日に、米国フロリダ州オーランドにおいて、「グローバル世界における予防:パートナーシップを通じた成功」をメインテーマに、第17回世界労働安全衛生大会が開催されます。ILO、国際社会保障協会(ISSA)、そして主催国における安全衛生機関の共催で、労働安全衛生分野における専門家の方々の情報交換の場として3年おきに世界各地で開催されているこの国際会議ですが、米国で開かれるのは今回が初めてです。
 世界大会会場において、ILOは、労働安全衛生の現況を簡単にまとめた報告書「ディーセント・ワークとは安全な仕事(Decent Work - Safe Work:・英文・48ページ)」及び職場における栄養問題を扱った書籍「仕事と食:職場における栄養不良、肥満、慢性疾患解決策(Food at work: Workplace solutions for malnutrition, obesity and chronic diseases・英文・448ページ)」を発表します。前者は業務関連の災害や疾病に関する世界全体及び国別の統計数値に加え、今年8月に行われた日本の石綿条約(第162号)批准のニュースも含み、労働安全衛生に係わる世界各地の最新の動向を紹介しています。
 後者は世界各地の職場における飲食習慣を紹介したユニークな出版物で、栄養不良が労働者の健康に影響を与えるだけでなく、驚くほど生産性を低下させる事実を検討しています。日本からはお弁当の例などが取り上げられています。本書は有料出版物(定価6,000円)ですが、英文概要はILOのホームページ上でご覧になることができます。

2005年8月発表分

 国際労働基準に関するILO新刊書発行(英語原文)
    2005年8月30日(火)発表ILO/05/33

 ILO国際労働基準局では、この度、専門家以外の方々に国際労働基準をもっと知っていただくため、国際労働基準の簡単な入門解説書「Rules of the game: A brief introduction to International Labour Standards(ゲームのルール:国際労働基準概説・96ページ・英文)」を作成しました。
 2005年8月現在、ILOは185の条約と195の勧告を採択しています。条約・勧告が取り上げているテーマは幅広く、結社の自由及び団体交渉、強制労働、児童労働、機会及び待遇の平等、雇用促進及び職業訓練、社会保障、労働条件、労働行政及び労働監督、業務関連災害の予防、母性保護、移民労働者その他の労働者の保護といったように多岐にわたっています。本書は、これらの条約と勧告の分野別概要に加え、国際労働基準の性質とその適用監視の仕組みを簡単に説明しています。

2005年6月発表分

 ILO理事会:新議長選出、結社の自由委員会はカンボジア、コロンビア、イラン、ミャンマー、ジンバブエの案件に特に注意を喚起(英語原文)
    2005年6月17日(金)発表ILO/05/32


スーダンは、子ども兵士をどう思うか
 6月17日にジュネーブで開かれた第293回ILO理事会では、2005〜06年の新議長として、アルゼンチンのカルロス・A・トマダ労働・雇用・社会保障大臣が選出されました。2003年5月から現職にあるトマダ大臣は、弁護士として労使関係や団体交渉の分野で豊富な経験をもっています。労働者側副議長には、理事会労働者側グループのスポークスマンでもあるルロイ・トロットマン・バルバドス労働者組合書記長、使用者側副議長には、ダニエル・フネス・デ・リオハ・アルゼンチン産業連合社会政策局長がそれぞれ再選されました。
 理事会はまた、結社の自由委員会の第337次報告書を承認しました。委員会には現在、120件の案件が付託されていますが、今回はそのうち35件が審議され、労組指導者2名が相次いで暗殺されたカンボジ ア、労組指導者に対する殺害その他の暴力行為の存在が1995年から取り上げられているコロンビア、複数労組指導者の逮捕に至った政府保安部隊との衝突が見られたイラン、結社の自由の法的枠組みがなく、公認労働者団体も存在せず、労働問題の苦情を提起した組合活動家や労働者が逮捕・投獄されているミャンマー、組合員や労組指導者の専断的な逮捕・勾留、脅迫等が行われているジンバブエの案件に特別の注意が喚起されました。

 第93回ILO総会閉幕:労働面の重要な懸念事項に関する緊急活動に向けた道筋を決定(英語原文)
    2005年6月16日(木)発表ILO/05/31
 6月16日に閉幕した第93回ILO総会の主な成果は以下の通りです。
  • 漁 業:新たな条約と勧告の採択に向けた審議が行われましたが、表決の際の定足数が達成されず、採択には至りませんでした。総会は理事会に対し、審議報告書を土台として、2007年の総会で本議題を再び取り上げるよう求めました。
  • 2006/07年事業計画・予算:組織としての投資ニーズと臨時項目に対応するため、現行予算比実質1.1%増となる総額5億9,431万ドルの2006/07年の事業計画・予算が採択されました。新事業計画・予算はまともで人間的な働き方を意味するディーセント・ワークを世界の目標とすることに重点を置き、ディーセント・ワーク国家計画を含み、地方、国家、地域、国際レベルでそのために必要な活動から構成されています。基準並びに働く上での基本的な原則と権利の推進、男女がまともな雇用と所得を確保できる機会及び企業振興の機会の拡大、社会的保護を全ての人々に広げ、実効性を高めること、そして政労使の三者構成主義と社会対話の強化といったILOの四つの戦略目標の補強に加え、若者のディーセント・ワーク、� �業の社会的責任、輸出加工区、インフォーマル経済に関する事業が提案されています。
  • 若者の雇用:近年、記録的な水準に達している若者の失業問題について、100カ国以上の参加者を得て、若者がディーセント・ワークを達成できるための道筋と若者の就業といった課題を前進させる上での国際社会の役割について話し合いが行われました。国連事務総長の提案による若者雇用ネットワーク(YEN)でILOが引き続き主導的役割を果たすこと、そしてYENを先進国・途上国を問わず世界に広めていくことが奨励されました。また、若者の雇用促進に向けたILOの行動計画は知識構築、広報、国際労働基準に沿った若年労働者の権利促進、技術支援を基礎とした実践的なものとすべきことが提案されました。
  • 労働安全衛生:労働安全衛生の分野における促進的な枠組みの形成に向けた第一次討議が行われ、そのための文書は勧告に補足された条約の形式を取ることが決定されました。そして、その文書は、労働安全衛生を各国の課題の上位に位置させることを支援することに加え、マネジメント・システムズ・アプローチを通じた予防原則に基づき、より安全でより健康的な作業環境、労働安全衛生国家計画の開発、国家の労働安全衛生制度の継続的改良を推進するものであるよう提案されました。
  • 国際労働基準:基準適用総会委員会では25の個別ケースに加え、ミャンマーの強制労働問題が審議されました。ミャンマーの問題が委員会特別会合で審議されるのは今年で5年目ですが、最悪の形態の強制労働の継続など状況にあまり変化が見られず、強制労働の苦情を申し立てた人を虚偽申立として政府が起訴するつもりであるとの警戒すべき状況や、ILO連絡駐在員の移動の自由の問題や深刻な申立て案件が未解決のままであることなどに鑑み、2001年以来大半の加盟国が続けてきた見守る姿勢のこれ以上の継続は不可能として、加盟国政労使に対し、対外直接投資や国有・軍有企業を含み、ミャンマーとの関係を早急に見直し、11月の理事会までに報告するように求めました。また、この問題の存続は結社の自由が全� �保障されていない現状と切り離して考えられないとして、ILO連絡駐在員の任務に結社の自由及び団結権保護条約(第87号)の適用に対する支援も加えるよう求められました。
     ILO審査委員会が設置されたもう一つの事例であるベラルーシの結社の自由問題については、審査委員会の勧告に従う具体的な目に見える措置が講じられていないとして、政府を支援し、対策を評価するILO使節団をベラルーシに派遣するよう求められました。
     今年は労働時間が総合調査の対象となり、審議の結果、グローバル化する世界における公正な国際競争に寄与するため、労働時間を制限する国際労働基準は依然必要であるとの結論が導かれると共に、1919年採択の労働時間(工業)条約(第1号)と1930年採択の労働時間(商業及事務所� ��条約(第30号)は労働時間の規制に関する今の現実を十分反映しておらず、ますます多くの国に過度に硬直的な基準と見られるようになってきている事実が確認されました。審議においては、労働者の安全保障・健康・家族の生活の保護と、柔軟性の二つの要件を調和させることの必要性が強調されました。また、この分野における規制的枠組み、団体交渉、社会対話の重要な役割も主張されました。ILOは審議の結果を理事会に提出し、フォローアップの方向を決定することになります。
  • 強制労働:1998年に採択された「仕事における基本的な原則と権利に関するILO宣言」のフォローアップ活動の一環として作成されたグローバル・レポートに基づく強制労働に関する特別会合では、強制労働は人間の尊厳の侵害であるとして強く非難され、この世界的な問題に取り組むため国際的に手を組もうとのILO事務局長の提案が支持されました。そして、強制労働を世界から廃絶するための基本的な要素として、法の執行、啓発キャンペーン、政府及び社会的パートナーの能力構築、被害者の社会復帰、地域レベル及び世界レベルでの協力、持続可能な技術協力計画があげられました。総会での審議をもとに、理事会で具体的な行動計画が決定されます。
  • ゲスト・スピーカーその他:今年のゲスト・スピーカーはアルジェリアのアブデラジズ・ブテフリカ大統領とナイジェリアのオルシェグン・オバサンジョ大統領でした。現在、アラブ連盟の議長も務めるブテフリカ・アルジェリア大統領はグローバル化に新たに社会的側面を与えることを求め、アフリカ連合の議長を務めるオバサンジョ・ナイジェリア大統領はILOのディーセント・ワーク目標を世界の目標とする動きへの参加をアフリカ開発のパートナーに呼びかけました。
     総会の議長はヨルダンのバシム・カリル・アルサリム労働大臣、副議長はアンドリュー・J・フィンレー・カナダ使用者代表、イルダ・アンデルソン・メキシコ労働者代表、そしてエクアドルのガロ・チリボガ・サンブラノ労働・雇用大臣� �務めました。
     また、理事会の選挙も行われ、日本からは使用者側正理事として日本経団連国際協力センターの鈴木俊男参与、労働者側正理事として日本労働組合総連合会の中嶋滋総合国際局長がそれぞれ再選されました。十大産業国に含まれる日本の政府側理事は常任理事です。
     4回目となる今年の児童労働反対世界デー(6月12日)では、5〜10年以内に小規模鉱業と採石業から児童労働を廃絶しようとの行動に向けた呼びかけが行われました。

 オバサンジョ・ナイジェリア大統領ILOで演説:「新しいアフリカ」の構築にはディーセント・ワーク、債務免除が必要(英語原文)
    2005年6月10日(金)発表ILO/05/30
 現在、ジュネーブで開かれている第93回ILO総会において、6月10日にゲスト・スピーカーとして、ナイジェリアのオルシェグン・オバサンジョ大統領が演説を行いました。アフリカ連合(AU)の議長も務めるオバサンジョ大統領は、2004年9月に開かれた雇用と貧困緩和に関するAU特別サミットで、雇用創出をアフリカの経済・社会政策の明確で中心的な目標とすることが確認された事実に言及し、今年9月に予定されているミレニアム+5サミットでもILOの提唱するまともで人間的な働き方を意味するディーセント・ワーク目標を世界全体の目標とすることを真剣に検討するよう呼びかけました。また、「我々は改革並びに成長及び開発に向けた新たな路線の構築に真剣であるが、債務免除なしにはこれは不可能」として、� �所得国の債務帳消しを強く訴えました。しかし、債務免除だけでは、ミレニアム開発目標の実現に向けた進歩を加速させるために必要な最低限の資金拠出がもたらされるわけではないとして、全ての開発パートナーに対し、政府開発援助(ODA)を国内総生産(GDP)の0.7%に増大するとの目標に向け、しっかりしたスケジュールを定め、この点に関して出された各種の革新的な提案を真剣に検討することを求めました。

 世界規模で展開される児童労働反対世界デーの活動の一環として、ILO、小規模鉱山及び採石場の児童労働禁止を提唱(英語原文)
    2005年6月9日(木)発表ILO/05/29
 ILOは2002年より、6月12日を児童労働反対世界デーとして、この問題に注目を喚起し、児童労働、特に最悪の形態の児童労働の撤廃に向けた世界的な動きに脚光を当てる日としてきました。4年目を迎える今年の世界デーでは、鉱山及び採石場で働く子どもたちの問題に焦点を当て、世界各地で様々な行事が行われます。日本では、6月12日当日にシンポジウムを開くほか、6月15日まで児童労働写真展が開かれています。ジュネーブでは6月10日に行動を呼びかける特別イベントが開かれ、ブラジル、ブルキナファソ、コロンビア、パキスタンなど、少なくとも14カ国の政府、労働者、使用者の代表が、5〜10年の期限を定めて小規模鉱業及び採石業から児童労働を撤廃することを約した協定をILOに提出する予定です。
 世界全� ��では少なくとも100万人の子ども(5〜17歳)が、小規模の鉱山や採石場で働いているとILOは推計しています。作業場の機械化率は典型的に低く、労働者を保護する道具や安全装置も不足しています。トンネルの崩壊、爆発事故、岩盤崩落、水銀や鉛などの有毒物質への暴露、珪肺症のような慢性的な健康状態による死亡と負傷の危険にさらされる上、長時間労働と重い荷、汚く、危険な労働環境は、事故と疾病の危険を高める悪循環に寄与し、子どもが健康な大人に成長する機会を否定します。ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)が作成した背景資料は、小規模鉱山・採石場は、人が立ち入りにくい僻地にあることが多いため、規制が難しい上、地元の雇用選択肢がほとんどなく、子どもたちは貧しい家計を分担して支えるよ う期待されているといった問題点を指摘しています。
 1999年及び2002年に開かれた鉱業に関する政労使三者構成のILOの会議で、小規模鉱業における児童労働問題に積極的に取り組むことが求められました。これを受けて、モンゴル、タンザニア、ニジェール、南米アンデス諸国でパイロット・プロジェクトを行ったIPECの経験から、この部門で働く子どもたちを支援する最良の方法は、地域社会と協力し、小規模鉱業の経済的将来性、安全性、環境上の持続可能性を改善し、通学しやすいまともな学校、訓練、基礎的サービスを通じて、子どもの将来展望を高めることであることが示されています。

 グローバル化に社会的側面を− ブテフリカ・アルジェリア大統領(英語原文)
    2005年6月7日(火)発表ILO/05/28
 ジュネーブで開かれている第93回ILO総会において、6月7日にゲスト・スピーカーとして、アルジェリアのアブデラジズ・ブテフリカ大統領が演説を行いました。大統領は2005年9月に予定されているミレニアム宣言見直しのための国連サミットが、平和と国際安全保障の維持に寄与するグローバル化の社会的側面の構築を刺激することを願うとの望みを述べました。また、民主主義と雇用問題における自国の取り組みを紹介し、零細企業の創設や少額融資制度などを通じた若者の失業対策が功を奏していることを示しました。さらに、人間的かつ近代的な開発モデルを提案し、そのモデルは働くことができ、働く年齢にある全ての人々にまともな雇用を得る権利を確保しない限り、意味をなさないとしました。昨年ワガドゥグで開か� ��た貧困と雇用に関するアフリカ連合特別サミットが「人間の顔をしたグローバル化」を提唱したことに触れ、南半球、特にアフリカでは、グローバル化にその不可欠な側面として人間的側面を与えることについて、人々が全精力を傾けて先進国の支持を得ようとしていると結びました。

 ILO総会で新理事選出(英語原文)
    2005年6月7日(火)発表ILO/05/27
 ジュネーブで開かれている第93回ILO総会において、6月6日に理事選挙が行われました。ILOの理事会は、正理事56名(政府側28名、使用者側14名、労働者側14名)及び副理事66名(政府側28名、使用者側19名、労働者側19名)から構成されています。理事の任期は3年で、今回選出された理事の任期は2008年までとなります。日本からは使用者側正理事として、日本経団連国際協力センターの鈴木俊男参与、労働者側正理事として、日本労働組合総連合会の中嶋滋総合国際局長がそれぞれ再選されました。日本を含む十大産業国の政府理事は常任の理事となっています。

 世界の雇用危機は民主主義、自由に対する脅威とILO事務局長−経済成長で創出された数兆ドルの富がわずかしか雇用に流れない現状は持続可能でないと強調(英語原文)
    2005年6月6日(月)発表ILO/05/26
 ジュネーブで開かれている第93回ILO総会において6月6日に演説を行ったソマビアILO事務局長は、2004年に世界経済は5%成長し、生産高は4兆ドル近く増大したにもかかわらず、雇用の伸びはわずかに1.7%で、失業者数は50万人減少したに過ぎないという富と雇用が大きく分断された現状は、世界の安全保障、開発、民主主義にますます大きな脅威を与え、早急に対処が必要と唱えました。そして、失業者または働いていても貧しい人々が世界には10億人以上存在し、世界の労働力の約半数が1日2ドル未満で暮らし、国によっては10人中9人までが未組織で、保護されておらず、不安定なインフォーマル経済で働いており、働ける状態にある若者の半数以上が昨年働いていなかったとのデータを示しながら、経済成長と雇用成長� ��断絶を修復し、優先事項のバランスを再調整し、仕事を再評価し、適正な投資政策にターゲットを定める必要性を強調しました。ILOではそのために、課題の焦点をILOの中核的な価値に向け、業務を再活性化させ、人間らしいまともな働き方を意味する「ディーセント・ワーク」の目標を推進しているとした上で、昨年9月に開かれたアフリカ連合の雇用と貧困緩和に関する特別サミット、今年2月に開かれたILO欧州地域会議、中南米諸国首脳の諸会合、欧州委員会のソーシャル・アジェンダなどにおいて、ディーセント・ワーク目標に対する支持が表明されていることや、2004年に出されたグローバル化の社会的側面世界委員会の報告書が公正なグローバル化に関する議論を世界的に誘発し、昨年9月には国連総会でこれを支� ��する決議が採択されたことなどを紹介しました。そして、ディーセント・ワークを世界の目標とするために必要な相互に連結した三つの行動として、1)労働組合、使用者団体、雇用・労働・社会問題担当省庁の強化を通じた集団的な能力構築、2)ILOが各国の優先事項により効果的に貢献できるよう、国家及び地域レベルでディーセント・ワークを推進するILOの努力の強化、3)成長、投資、雇用を国際協力の中心に据えることによってディーセント・ワークを開発に関する論議の主流に移行させることをあげました。また、「ディーセント・ワーク目標はミレニアム開発目標達成に向けた進歩を加速させる上でのカギ」として、マクロ経済、金融、貿易、投資、労働の諸政策を統合し、ディーセント・ワークを政策策定における目標� �することを提案しました。

2005年5月発表分

 ILO総会役員選出(英語原文)
    2005年5月31日(火)発表ILO/05/25


アフリカでどのように多くの国が民主主義です。
 ジュネーブで6月16日まで開かれるILOの第93回総会は、初日の5月31日に、議長としてヨルダンのバシム・カリル・アルサリム労働大臣、副議長としてアンドリュー・J・フィンレー・カナダ使用者代表、イルダ・アンデルソン・メキシコ労働者代表、そしてエクアドルのガロ・チリボガ・サンブラノ労働・雇用大臣を選出しました。

 第93回ILO総会開幕:議題は労働条件、強制労働、若者の雇用など(英語原文)
    2005年5月30日(月)発表ILO/05/24
 5月31日〜6月16日の日程で、ジュネーブで開かれている第93回ILO総会の主な議題は以下の通りです。
  • 漁  業:現在この分野について存在する7つの基準を改正し、新たな条約と勧告を採択することに向けた最終的な話し合いが行われます。漁業は世界で最も危険な産業の一つといわれていますが、審議の中心は基準に盛り込む労働安全衛生に関する規定となる予定です。現在ある条約では漁業労働者の約10%しか適用の対象になりませんが、新条約案は大型漁船や海外操業漁船も含み、この産業の全就業者の90%以上を対象とすることを目指しています。
  • 労働時間:1919年採択の労働時間(工業)条約(第1号)と1930年採択の労働時間(商業及事務所)条約(第30号)を対象とした調査報告をもとにした審議が行われます。報告書はグローバル化する世界における公正な国際競争に寄与するため、労働時間に関する国際的に許容された基準は必要であるものの、第1号条約及び第30号条約は労働時間に関する規制についての現状を十分反映しておらず、ますます過度に硬直的な基準と見られるようになってきていると記し、両条約採択後の状況変化に鑑み、改正の必要性を指摘しています。改正の方向性として、労働者に実効的な保護を提供するだけでなく、労使双方にとってより柔軟な労働時間編成形態を含んだものとすることを提案しています。
  • 若者の雇用:近年、若者の失業率は世界的に記録的な水準に達し、2004年時点で働ける状態にあった若者の半数以上が働いていませんでした。若者が生き生きと人間的に働けるディーセント・ワークを確保できるための道筋とこの課題を推進する上での国際社会の役割が論議されます。ILOは知識構築、広報、技術支援を通じて若者のディーセント・ワークを推進しているほか、国連事務総長の提案による若者雇用ネットワーク(YEN)及びミレニアム開発目標に関わる国際的な活動で主導的な役割を果たしています。6月7日は「国際開発目標と若者の雇用」をテーマとするYENのハイレベル対話が行われます。
  • 労働安全衛生:労働安全衛生の分野における条約、勧告、または宣言といった促進的な枠組みの形成に向けた審議が行われます。
  • 強制労働:6月4日には基準適用委員会で、ヤンゴンに駐在するILOの臨時連絡担当官からの最新の報告を含み、ミャンマーの強制労働状況に関する審議が行われます。
     6月8日には、1998年に採択された「仕事における基本的な原則と権利に関するILO宣言」のフォローアップ活動の一環として作成された強制労働に関するグローバル・レポートの審議が行われます。レポートは政府間機関が発行したこの種のものとしては初めて、世界各地の様々な経済における現代の強制労働の実態とその背景原因について報告しています。総会での審議は、強制労働に関する今後4年間の行動計画の基礎となります。
 この他に、アラブ被占領地の労働者の状況、2006/07年の事業計画・予算案などの審議も行われます。理事会より提案されている予算案は、2004/05年予算の為替レートで5億6,860万ドルで、組織としての投資ニーズと臨時項目に対応するため、現行予算比実質1.1%の微増になっています。また、政府、使用者、労働者の代表で構成される理事会の選挙も行われます。今年のゲスト・スピーカーはアルジェリアのアブデラジズ・ブテフリカ大統領とナイジェリアのオルシェグン・オバサンジョ大統領で、それぞれ6月7日と9日に演説を行います。
 なお、今年の児童労働反対世界デー(6月12日)は鉱山と採石場で働く子どもの問題がテーマとなっています。ジュネーブのILO本部では6月10日に特別イベントが開催されますが、国内� �も、6月12日にILO駐日事務所主催のシンポジウムが予定されているほか、6月15日まで児童労働写真展を開催しています。

 アラブ被占領地の労働者の状況、依然悪化(英語原文)
    2005年5月27日(金)発表ILO/05/23
 5月31日から始まる第93回ILO総会に提出される討議資料の一つである「The situation of workers of the occupied Arab territories(アラブ被占領地における労働者の状況・英文)」は、イスラエルとパレスチナの間では新たな対話の雰囲気が見られるものの、アラブ被占領地の人口の半数近く、180万人が貧困状態にあり、労働者とその家族の状況は依然厳しいとしています。アラブ被占領地における2004年の失業率は26%近く、失業者数は初めて22万4,000人に達したことに加え、労働力率や就業率も非常に低く、生産年齢にある男性の半数以下、女性のわずか1割しか就業しておらず、就業者1人で6人を支える構造になっていることを記しています。
 報告書は特に、若者(15〜24歳)の失業率が40%に達し、15〜24歳の若者の3人に1人、20代後半では半数以上が、軍の占領下でニート状態(働いても学んでもいない状態)を強制されている事実は、過激派運� �や暴力を育む温床となる可能性に注意を喚起し、若い男女を対象とした職業訓練、企業開発、就職指導が緊急に必要であることを指摘しています。
 イスラエル政府は2008年までに同国内で働くパレスチナ人労働者の数をゼロにする方針を打ち出していますが、報告書はパレスチナ経済が労働力の伸びに匹敵した国内雇用を創出する持続的な経済成長率を達成しない限り、イスラエルにおける就労は不可欠として、パレスチナ人労働者は必要であり、安全条件が満足される限り、歓迎するとのイスラエルの使用者の証言を引用し、今はイスラエルにおけるパレスチナ人の雇用機会の詳しい枠組みに関する新たな合意に向けて交渉する時期ではないかと提案しています。報告書は若者の雇用、男女平等、職業訓練に加え、年金制度がなく、 引退できない高齢労働者を対象とした基礎的社会保障の必要性も強調しています。

 ILO、強制労働に関する新しい調査研究を発表:世界全体で1,200万人以上が強制労働に従事(英語原文・日本語訳文及び関連資料)
    2005年5月11日(水)発表ILO/05/22
 ILOは1998年に採択した「仕事における基本的な原則と権利に関する宣言」のフォローアップ活動の一環として、2000年より毎年、宣言に含まれる基本的な権利に関する世界の現況を概説した報告書をグローバル・レポートとして6月に開かれるILO総会に提出してきました。5月11日に発表される今年のグローバル・レポートは、「A global alliance against forced labour(強制労働に反対するグローバルな同盟・英文)」と題し、強制労働の問題を扱います。強制労働をテーマとするものとしては2冊目となる本書は、今回初めて世界及び地域別に強制労働の実態を示す統計データを掲載し、世界全体で少なくとも1,230万人が強制労働に従事しており、うち240万人以上が人身取引の被害者であるとします。また、人身取引加害者が得る利益は毎年、世界全体で320億ドル(人身取引被害者1人当たり平均1万3,000ドル)に達するとします。
 報告書は、強制労働は世界中どの地域、どの産業にも見られる大きな世界的問題である事実を確認しています。地域別で見ると、強制労働従事者の数が最大なのはアジアで約950万人に達し、中南米・カリブの130万人、サハラ以南アフリカの66万人と続き、先進国で� �36万人存在すると推計されています。農業、建設業、インフォーマルな製造業搾取工場などでは男女大体同数ですが、商業的性的搾取の場合は被害者のほぼ全員が女性です。18歳未満の子どもも被害者全体の4〜5割を占めています。強制労働従事者全体の5分の1近くが人身取引の被害者ですが、この割合は地域によって異なり、先進国、移行経済諸国、中東・北アフリカでは、全体の75%以上を占めています。
 労働市場で長く差別を受けてきた少数民族を貧困の悪循環に閉じこめる債務奴隷のように、現代の強制労働のほとんどが依然途上国で見られますが、グローバル化経済のもと、新たに外国人労働者、特に、非正規移民の強制労働問題も登場してきました。
 報告書は、各国政府と国内機関が積極的な政策、法の活発な� �行、人間に対するこのような処遇をなくすことに向けた強い決意を追求するならば強制労働は廃絶できるとし、幾つかの国で見られる取り組みを紹介しています。

2005年4月発表分

 仕事関連の事故・疾病数依然増大−ILOとWHO、共同で予防戦略を呼びかけ(英語原文)
    2005年4月28日(木)発表ILO/05/21

 ILOが「仕事における安全と健康のための世界の日」とする4月28日に、ILOと世界保健機関(WHO)は共同で、予防的安全文化の世界的な必要性を強調する新聞発表を行いました。
 世界の日に際し、ILOが作成した報告書「World Day for Safety and Health at Work 2005: A Background Paper(英語)」は、毎年200万人以上の生命が失われている仕事関連の事故や疾病の件数が、一部途上国の急速な工業化を理由として、増え続けているように見えると記しています。報告書はさらに、働く人々の直面する最も一般的な危険は職業病のリスクになってきており、毎年、業務関連死亡者数の5人中4人に相当する約170万人の死亡原因になっているとします。死亡に到らないが、3日以上の欠勤をもたらす労働災害にあう人の数は毎年、約2億6,800万人、業務関連疾病の患者は約1億6,000万人になるとしています。
 地域別では、先進国や新興工業国の多くで労災件数は頭打ちになっていますが、急成長を続けているアジアや中南米のいくつかの国では増大しています。例えば1998年から2001年の期間に、中国では、死亡労働災害件 数が73,500件→90,500件、3日以上の欠勤を伴う労災件数が5,600万件→6,900万件といずれも増加しています。中南米でも同期間、特にブラジルとメキシコの建設業の成長と雇用者総数の増大を反映し、死亡労働災害件数が29,500件から39,500件に増えています。この理由について、ILOのタカラ労働安全衛生・環境国際重点計画部長は、新たに発展している国では、労働者が農村出身であることが多く、低技能で、安全な作業慣行に関する訓練もほとんど受けておらず、重機を扱った経験も電気のような産業上の危険に関する経験もほとんどまたは全くないためと説明します。そして、より成熟した開発段階に達すると、例えば今の韓国のように建設業からより危険度の低いサービス産業へと職業の移動が行われ、労災率は頭打ちになるとします。
 最も一般的な職業病は危険有害物質への暴露を原因とするガン、筋骨格系・呼吸器系・循環器系の各疾患、聴力喪失、病原体への暴露からくる伝染性疾患です。労働災害による死亡者数が減り続けている多くの先進国で、職業病、とりわけ石綿症による死亡者数の増大が見受けられます。石綿だけを理由とする労働関連死亡者数は毎年、世界全体で10万人に達します。一方、世界の労働力の半数が従事し、途上国では経済の主体である農業部門では農薬の利用による中毒死亡者数が毎年約7万人に達し、死亡に到らないまでも急性及び慢性的な疾病に罹患する患者の数は700万人以上になると報告書は推計しています。
 報告書はさらに、建設業についての新しいデータを掲載し、石綿を含む塵芥、シリカ、有害化学物質への暴露を� ��む様々な健康上の危険にさらされているこの業種では、毎年、産業全体の全死亡労働災害件数の約17%に当たる少なくとも6万件の死亡事故(10分に約1名が死亡)が発生していることを示しています。報告書はまた、今後15年間に労働市場に新規に参入する若年者(15〜24歳)と高齢者(60歳以上)の数が増大するため、この年齢層の労災率が上昇すると予測し、特別の事故疾病予防計画の開発を求めています。
 労働者の健康衛生面の改善に向け、ILOとWHOは職業安全衛生の分野で密接な協力関係を保っています。WHOは「全ての人にとっての職業衛生世界戦略」をもとに70の協力センター・ネットワークを通じて予防戦略実施上の支援を各国に提供しています。WHOの職業衛生関連活動の柱は、(1)各国が監督業務を強化し� ��職業衛生上の負荷を推計し、基礎的な国家職業衛生プロフィールを開発するよう、職業衛生に関する政策及び活動計画の開発及び実行上の支援を提供すること、(2)各種リスク要因の情報普及を目指した、WHO職業衛生協力センター・ネットワークを通じた能力構築、(3)各国が一次予防に焦点を当てて確立すべき職業衛生機関の最低限のパッケージの規定の三つで構成されています。

 ILO/WHO、保健業とHIV/エイズに関する共同指針を開発(英語原文)
    2005年4月22日(金)発表ILO/05/20
 ILOと世界保健機関(WHO)は、4月19〜21日にジュネーブで政労使三者構成の専門家会議を開催し、保健業とHIV(エイズウイルス)/エイズに関する共同ガイドラインを開発しました。採択されたガイドラインは、保健医療部門労働者の保護、訓練、スクリーニング、治療、秘密保持、職業上のリスクの最小化、予防、ケア、サポートといった幅広い事項について実践的な指針を提供するものとなっています。◆感染リスクの予防と抑制のための措置の行使、◆より安全で健康な労働環境を構築する政策・計画の導入に向けた政府、労働者、使用者による社会対話の活用、◆HIV/エイズ関連事項並びに患者及び労働者の権利とニーズについての啓発を目指した情報・教育・訓練の提供、◆女性が直面する特別の課題に配慮し 、男女が共に権利を理解できるよう確保することなどの原則が含まれています。
 ガイドラインは、6月の理事会で承認された後、正式に発行されます。

 ILO/WHO、保健業とHIV/エイズに関する共同指針を開発(英語原文)
    2005年4月19日(火)発表ILO/05/19
 例えば、サハラ以南アフリカ諸国では入院患者の半数以上がHIV(エイズウイルス)関連の患者で占められているといったように、世界で1億人強に達する保健医療産業従事者たちは、HIV感染者、エイズ患者に日常的に接し、過重労働、亡くなっていく患者たちを目の当たりにすることから来る絶望感、十分な安全・保健医療措置の不足、感染の危険といったことからもたらされる法外に大きな心身面の負担にさらされています。ILOの最近の報告書によると、世界全体で2,600万人の労働者がHIVに感染しているか、エイズ患者であると推計されています。特に保健医療部門の労働者に対する影響は多大で、例えば、南アフリカの保健部門では、1997〜2001年に全職員の14%がエイズで命を落としており、1999〜2005年にボツワナで� �保健医療部門の労働者の17%が失われると推計されています。
 ILOでは既に、「HIV/エイズと働く世界ILO行動規範」を採択し、職場における一般的なガイドラインを提供していますが、この度、世界保健機関(WHO)と協力し、保健業とHIV/エイズに関する共同ガイドラインを開発することとしました。4月19〜21日にジュネーブで開かれている政労使三者構成の専門家会議で審議されているこのガイドライン案は、保健医療の提供者と患者の双方における安全性の推進、HIV/エイズ関連サービスを受ける機会の拡大、刻印と差別の影響削減を通じ、保健部門に対する人々の信頼を高めることを目指しています。社会対話の役割に加え、保健医療労働者の保護・訓練・情報通知のための具体的かつ実際的な方法、� ��してスクリーニング、治療、秘密保持、職業上のリスクの最小化、予防、保健医療労働者に対するケアとサポートといった事項が取り上げられています。
 ILOの一般的なHIV/エイズ関連活動・資料については、HIV/エイズと働く世界ILO計画のウェブサイトをご覧下さい。

2005年3月発表分

 第292回ILO理事会閉幕: 労働者の権利、2006/07年度事業計画・予算案、グローバル化などを討議(英語原文)
    2005年3月24日(木)発表ILO/05/18


 3月3〜24日の日程で、ジュネーブのILO本部で開催されていた第292回ILO理事会の主な決定事項は以下の通りです。
  • グローバル化:理事会のグローバル化の社会的側面作業部会では、2004年2月に発表されたグローバル化の社会的側面世界委員会の報告書のILOによるフォローアップのための提案が審議され、公正なグローバル化に向けたILO特有の貢献として、ILOが21世紀の活動目標とするまともで人間らしい仕事「ディーセント・ワーク」の推進を世界の目標とすることで合意が得られました。特別ゲストとして演説を行った欧州委員会のウラジミール・シュピドラ雇用・社会問題・機会平等担当委員は、欧州連合とILOの課題がますます接近している点を指摘し、国際的な政策対話と多国間システムにおける政策整合パートナーシップの構築を推進する上でILOには重要な役割があることを強調しました。作業部会はまた� ��ILOが他の多国間機関、特に世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)などとより整合性のある政策を開発するため、パートナーシップを強化すべきであることに合意しました。

  • 労働者の権利ミャンマーの強制労働問題に関しては、ヤンゴン駐在のILOの臨時連絡員及び2月に同国を訪れた超ハイレベル・チームの報告書が検討され、当該懸念事項に関する信頼のおける対話の再開を表すチームの訪問という特別の機会を活用できなかったミャンマー当局最高レベルの対応を非難し、その事実が示す一般的な状況に対する深刻な懸念を共有する結論が全会一致で採択されました。結論は、強制労働を行わせた責任者の訴追と処罰などのいくつかの進展を、同国が正しい方向に進んでいる印と見る者も何人かいるものの、全体的な評価ははるかに期待外れと記し、現在の状況では2001年以来続けてきた「見守って待つ」姿勢をもはや継続できないとし、ミャンマーとの関係を見直し、適切と考え� �行動を取ることをILO加盟国政労使及びその他の機関に呼びかけた2000年の総会決議の枠内における適切な行動を求めるため、理事会の結論を政府、使用者、労働者代表、その他国際機関に伝達することを決定しました。ただし、理事会は依然、前向きの展開に向けた扉は開かれているとし、ミャンマーとの関係見直しにおいてそのような展開を客観的に考慮に入れるべきことも主張しています。6月のILO総会には何らかの進展を反映した文書が提出されます。
     理事会の結社の自由委員会には現在、134件の案件が付託されていますが、本理事会ではこのうち30件が取り上げられました。労組活動家の逮捕拘禁、幅広い業務のスト禁止、デモや横断幕の掲示といった労働者の権利の制限が問題となっているネパールについては 、特に注意が喚起され、政府に対し、スト禁止を厳密な意味での必要不可欠業務に留めるため必要不可欠業務法を改正することなどが要請されました。同国について、理事会は別に、労働組合活動が深刻な制限を受けており、組合のあらゆる会議が役人の事前認可を必要としていることはILOの基本的な基準に反するとの声明を発表しました。
     この他に、労組活動家に対する暴力、組合指導者の解雇と使用者の復職命令拒否、訴訟手続きの不当な遅れが問題となっているグアテマラ、労働組合選挙への当局の介入に関するベネズエラの案件、ハイレベルの組合役員を対象とした反組合的理由による解雇と、専断的な逮捕拘禁、反組合的脅迫・いじめに関するジンバブエの2件の案件に特に注意が喚起されました。
     日本からは、がっこうコミュニティユニオン・あいち(第2315号案件)が、地元で未登録の組合であることを理由に団体交渉権が否定されたとして行った申立が取り上げられ、組合の未登録理由が町内における組合員数が1名のためであり、未登録の組合と交渉に従事するかどうかは雇用主の裁量に委ねられており、地方公務員法上、職員は個人でも人事委員会や公平委員会に勤務条件に関する措置を要求できるとの政府の説明を受け、さらなる審査を必要としないとの最終決定が出されました。

  • その他:2006/07年度ILO事業計画・予算案の審議が行われ、現行年度予算の為替レートで5億6,860万ドルに相当する原案が今年6月の総会に提案されることになりました。機関としての投資ニーズと臨時項目に対処するため、現行予算比1.1%の微増を示す新事業計画・予算案は、ディーセント・ワークを世界の目標とすることに焦点を置き、現地レベル、国家レベル、地域レベル、国際レベルでそのために必要なさまざまな活動を基本にしています。働く上での基本的な原則と権利並びに基準の推進、男女が共にまともな雇用と所得を得る機会の拡大、社会保護の適用対象を全ての人に広げ、その実効性を高めること、そして政労使三者構成主義と社会対話の強化という4つの戦略目標を一層進めるほか、重点分野として� �若者のディーセント・ワーク、企業の社会的責任、輸出加工区、インフォーマル経済があげられています。
     理事会ではこの他に、スペインがILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)への協力を開始して10周年となるのを機に、ソフィア王妃と共にILOを訪れたフアン・カルロスI世・スペイン国王の演説を聴く機会も設けられました。

 サモア、第178番目のILO加盟国に(英語原文)
    2005年3月11日(金)発表ILO/05/17
 去る3月7日、ILOはサモア独立国より、トゥイラエパ・サイレレ・マリエレガオイ首相名で、同国がILO憲章の義務を正式に受諾する旨を記した書簡を受領しました。ILOの規定では、国連の加盟国はILO憲章の義務の受諾をILO事務局長に通知することによってILOの加盟国となることができます。1976年12月15日に国連に加盟しているサモアは、これにより2005年3月7日にILOの第178番目の加盟国となりました。

 スペインのフアン・カルロスI世国王及びソフィア王妃の両殿下ILOをご訪問:児童労働の強い糾弾と撲滅を訴える国王殿下(英語原文・演説西語原文・演説英語訳)
    2005年3月8日(火)発表ILO/05/16
 スペインがILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)に支援を開始してから今年で10年目になることを記念し、ソフィア王妃と共にジュネーブのILO本部を訪れた同国のフアン・カルロスI世国王は、ILOの政労使理事などを前に特別演説を行い、グローバル化のプロセスに人間的側面を与える努力の一環として、活発な児童労働対策を求めました。「世界全体で2億4,000万人を超える子どもたちが学校に行く代わりに毎日働いている」とした後、殿下は、児童労働は子どもの健康と教育に悪影響を与えるだけでなく、何よりも子どもたちの最も基本的な権利、尊厳と自由を侵害しているとし、強く糾弾し、なくしていかなくてはならないと訴えました。そして、児童労働の根元にある貧困は児童労働を実際、強制労働に変化させる とし、IPECのような事業を通じて、経済のグローバル化が世界中の人々にとってプラスの社会的な力となるよう寄与していきたいとの望みを述べられました。
 スペインは1995年にILOと覚書を交わし、中南米を中心にILOの児童労働撤廃努力を支援してきました。ソマビアILO事務局長は、このスペインの協力は、IPECが10万人以上の子どもたちを最悪の形態の児童労働から救い出し、教育の場に復帰させることを可能にした上、所得水準の向上によって生活の糧を子どもの労働に依存しなくてもよくなった家族の数は3万5,000世帯を下らないと評価しながらも、児童労働撤廃の道のりはまだ長く、今日の少年少女が明日には、まともで人間的な仕事であるディーセント・ワークに従事する男女に成長するよう、活動を続 けていかなくてはならないとしました。

 ILOの国際女性の日イベント(ジュネーブ・2005年3月8日)(英語原文)
    2005年3月4日(金)発表ILO/05/15
 2005年の国際女性の日(3月8日)に際し、ジュネーブのILO本部では「カメラの後ろの女性たちに焦点を当てて」と題する円卓討議(3月8日)と国際映画祭(3月4〜10日)を開催します。円卓会議では、国際的に認められた二人の女性監督、フランスのクレール・ドゥニ監督とインドのパメラ・ルークス監督に、映画産業における男女平等と女性の役割などについて語ってもらう予定です。
 1948年にパリで生まれ、14歳までアフリカで過ごしたドゥニ監督は、映画高等学院を卒業後、コスタ・ガヴラス、ヴィム・ヴェンダース、ジム・ジャームッシュといった監督の助手を務めた後、初の長編映画「ショコラ」(1988年)で監督デビューしました。ドゥニ監督は、暴力と圧迫のルールに則って人生を構築している男性の力に焦点� ��当て、疎外されている人々や社会から放逐された人々の悲哀に同情と理解を示す作品を作っています。1990年の「S'en fout la mort」では移民の問題を、1993年の「パリ、18区、夜。」ではエイズを取り上げています。
 カルカッタ生まれのパメラ・ルークス監督は、1986年からインド・テレビジョン用の時事番組やドキュメンタリーの制作に携わり、「Chipko: A Response to the Forest Crisis(チプコ:森林の危機に対する対応)」、「Girl Child: Fighting for Survival(少女の生存のための戦い)」、「Punjab: A Human Tragedy(パンジャブ:人類の悲劇)」、「Indian Cinema: The Winds of Change(インド映画:変化の風)」、「Indian Wildlife: Trading to Extinction(インドの野生生物:絶滅に向けた取引)」といった多様なテーマを取り上げ、常に時事的な社会問題を扱うドキュメンタリーを作り続けてきました。1994年には、カシミールの政治情勢が人間に対して持つ意味を考えたドキュメンタリー「Turmoil in paradise(楽園の混迷)」を制作しました。続く「Train to Pakistan(パキスタンへの列車)」を経て制作された3作目の長編作品「Dance like a man(男のように踊る)」は高く評価され、その傑出した独創力によってニューヨークで賞を受け、2003年のインド最優秀英語映画賞を受賞しました。
 昨年に続き開かれる第2回国際映画祭は、取り上げられることの少ない社会問題に焦点を当てた女性監督の作品を世界各地より集めています。「女性と仕事」という総合テーマに加え、児童労働、グローバル化、仕事における安全と健康、ディーセント・ワークといったILOに関連するテーマを取り上げた作品も上映されます。
 1987年にハリウッドで制作されたベスト作品100本の制作に携わった主要スタッフに女性が占める割合はわずか3%でした。16年後の今日でもこの割合はわずか1%増えただけです。
 なお、日本では3月8日に、東京都渋谷区のUNハウスにおいて在 日国連機関が共催で公開フォーラムを開催します。北京で開催された第4回世界女性会議から10年目に当たる今年のフォーラムは、「しなやかな女性を目指して〜女性とエンパワーメント 過去・現在・未来」をテーマに、この10年間の成果と課題、そしてこれからの社会について考えます。3月8日〜4月22日には、UNハウス1、2階で写真展「A Day in the Life of Africa」が開かれます。

 第292回ILO理事会:ミャンマーの労働情勢、予算、グローバル化などを審議(英語原文)
    2005年3月3日(木)発表ILO/05/14
 3月3〜24日の日程でジュネーブのILO本部で開催されている第292回ILO理事会の主な議題は以下の通りです。
  • ミャンマー:ミャンマーの強制労働問題に関しては、2月21〜23日に同国を訪れた超ハイレベルチームの報告書をもとにした審議が理事会最終週に行われます。強制労働の撤廃に向けたミャンマー当局最高レベルの姿勢を評価し、この点に関し、ILOと協力を続ける決意があるかどうかを見極めるために同国を訪れたチームですが、チームの見解では、理事会によって付与されたこの任務を十分全うできるだけの会談日程が組まれていなかったため、労働大臣及び首相との会談の際に、技術レベルでこれ以上議論を深めても意味がないとの姿勢を明らかにした上で、その時点で訪問を切り上げて出国しました。チームは出国前に外務大臣に対し、理事会でこの案件が審議されるまで、さらなる展開に向けて扉は開かれている と指摘してきました。理事会では、ハイレベルチームの報告書に加え、ILO事務局の報告書及び何らかの最新の情報を考慮に入れた上で審議を行い、適当と考える何らかの結論を導き出す予定です。
  • グローバル化:理事会のグローバル化の社会的側面作業部会では、グローバル化の社会的側面の強化に向けた理念をILOが具体的に押し進める方法に関する提案が検討されます。成長、投資、雇用といった事項に関し、関係多国間機関の間で政策の整合性を図ること、グローバル化政策フォーラムの開催、グローバル経済における変化に対する構造的な調整を労使の安全保障と結びつけることに関する政策開発対話、その他ILOの使命の枠内にある優先分野について諸理事の見解が表明される予定です。
  • 2006/07年度ILO事業計画・予算案:地元レベル及び国際レベルのプログラムを通じて「全ての人にディーセント・ワークを」というILOの目標を支えることを目指した2006/07年度の事業計画・予算案が検討されます。提案される予算案の事業レベルにおける支出水準は現行年度と同等ですが、機構面の緊急投資ニーズと臨時項目用の特別引当金を設けることによって全体としては現行予算比4.3%の微増を示しています。理事会の審議をもとに、今年6月に開かれるILO総会に提出される事業計画・予算原案が策定されます。
  • その他:理事会ではこの他に、2002年のILO総会で採択された決議に沿ってILOの活動方式全体で政労使の三者構成主義と社会対話を強化する努力の検討などが行われ、結社の自由委員会の開催、スペインのカルロスI世国王殿下の特別講演などが予定されています。

 対ILO児童労働プログラムへのスペイン協力10周年を記念し、スペインのフアン・カルロスI世及びソフィア王妃ILO訪問(英語原文)
    2005年3月3日(木)発表ILO/05/13
 スペインは1995年にILOと覚書を交わし、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)への支援を開始しました。協力関係構築10周年を記念し、スペインのカルロスI世国王とソフィア王妃の両殿下が3月8日にジュネーブのILO本部を訪れ、理事会の場で特別演説を行います。両殿下のILO訪問は、ジュネーブに本部のある国際機関へのご訪問の一環として行われるものです。
 ILOは現在、世界全体で約2億4,600万人の子どもたちが児童労働に従事していると推計しています。このうち8人に1人、1億7,900万人が心身や道徳を損なう危険性のある最悪の形態の児童労働に従事していると見られます。

2005年2月発表分

 2005年児童労働反対世界デーの焦点は鉱山及び採石場における児童労働(英語原文)
    2005年2月25日(金)発表ILO/05/12


 ILOは2002年より、6月12日を児童労働反対世界デーとして、この問題に注目を喚起し、児童労働、特に最悪の形態の児童労働の撤廃に向けた世界的な動きに脚光を当てる日としてきましたが、4年目を迎える今年の世界デーは、鉱山及び採石場で働く子どもたちに焦点を当てることに決定しました。
 ILOの推計によれば、小規模の鉱業や採石業で働く子どもの数は世界全体で約100万人に達し、生命を失う危険や、負傷その他の健康問題を被る危険のある想像しうる限り最悪の条件の下で働いています。鉱山の地下及び地上において、しばしば鉛や水銀といった危険有毒物質が存在する水中などの環境で、子どもたちは重い荷を運び、爆薬をセットし、砂や泥をふるい分け、狭いトンネルをはいずり回り、有害粉じんを吸い込み� �がら、長時間にわたって働いています。アフリカのダイヤモンド、金、貴金属、アジアの宝石及び岩石、南米の金、銅、エメラルド、スズといった鉱山で児童労働が見られます。世界各地に位置する岩石採石場でも子どもたちは、重い荷物を引っ張ることや運搬すること、有害粉じん・粒子の吸入、危険な工具や破砕装置の使用から生じる安全・健康上の危険にさらされています。
 モンゴル、タンザニア、ニジェール、南米アンデス諸国でパイロット・プロジェクトを行ったILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)の経験から、鉱業及び採石業に携わる地域社会が法的権利を獲得し、協同組合その他の生産単位を組織化し、成人労働者の健康及び安全性並びに生産性を高め、しばしば僻地にあるこういった地域に学校、清潔な水� ��衛生設備といった必要不可欠なサービスを確保することを助けることによって、危険な状況にある児童労働の撤廃は可能なことが示されています。
 6月にはジュネーブでILOの総会が開かれますが、6月12日当日及びその前後には、世界各地で地元の団体や全国的団体、多くの児童グループがILOの政労使と共にこの日にあわせた行事を行い、小規模鉱山及び採石場から児童労働を即刻撤去する必要性を強調することが期待されます。

 ILO超ハイレベルチーム−ミャンマーを去るに当たって声明を発表(英語原文)
    2005年2月23日(水)発表ILO/05/11
 昨年11月のILO理事会の決定を受け、2月21〜23日にミャンマーを訪問中であったILO超ハイレベルチームは、次のような声明を発表して、ヤンゴンを後にしました。
 「2004年11月の第291回ILO理事会で超ハイレベルチームに課された使命は、強制労働の撤廃に向けたミャンマー当局最高レベルの姿勢を評価し、この点に関し、ILOと協力を続ける決意があるかどうかを評価することであった。代表団の構成はそれに従って定められた。代表団がヤンゴンに向けて出発するまでにこの委任事項はミャンマー当局に十分ご通知申し上げた。にもかかわらず、国民会議に関連した様々な理由から、代表団が理解するようにその使命を満足いくように果たすことを可能にするであろう会合が日程に組み込まれていないことを、代表団� �到着時に知らされた。
 この状況の下、そして労働大臣及び首相と話し合い、代表団の見解をお知らせした上で、本代表団は、これらの会談で概略が示された具体的な措置について、これは代表団の見解では、最近理事会で表明された懸念を緩和するのに寄与する可能性があるかもしれないが、技術レベルでこれ以上議論を深めても現段階では意味がないと決断した。
 超ハイレベルチームは3月に開かれる次期ILO理事会に報告書を提出する。」
 代表団はまた、議論の内容を明らかにするものとして次の4点を示しました。
  • 国防省に対し、指揮下にある全ての部隊に向け、強制労働を行わないよう求めるさらなる指令の発行を求める1/99号令補足令の規定に実効性を持たせる公共行政指令を国家平和発展評議会(SPDC)の権限あるレベルから発行することとその十分な広報
  • 軍に関する申立てを扱う軍内のハイレベル・フォーカルポイントの任命と共に、調整役の確定を含む強制労働に関する合同行動計画の合意事項に関する当局の意思の再確認
  • ILO連絡担当官の移動の自由に関する当局の実行意思の再確認
  • 重反逆罪に問われた2人の人に与えられた大赦をILO事項に関連して有罪判決を受けたもう1人にも与えることや昨年11月の理事会で明らかになった深刻な強制労働事例の信頼できる解決を含み、ミャンマー人民に強制労働に関する苦情を申し立てる可能性についての信頼感を構築するような追加的措置の行使
 ILO事務局長によって任命された超ハイレベルチームは、ニニアン・スティーブン元オーストラリア総督を団長に、ルート・ドライフス元スイス連邦大統領、チョン・エイヨン韓国国会議員(前ILO理事会議長)の3名から構成されています。

 ILO地域会議、欧州及び中央アジアの社会的課題を拡充(英語原文)
    2005年2月18日(金)発表ILO/05/10
 欧州及び中央アジアのILO加盟国50カ国より4名の政府首脳(ハンガリー、ルクセンブルク、カザフスタン、マルタ)、30名以上の労働大臣を含む600名以上の政府、労働者及び使用者の代表が集まって、仕事の世界に関する域内共通の懸念事項を討議するため開かれていた第7回欧州地域会議は、「対話と協力を通じて、民主主義、経済繁栄、社会正義の共通の未来を推進するため、共に活動する」との合意を達成して2月18日に幕を閉じました。会議で採択された一連の結論は、グローバル化と急速な経済統合は欧州及び中央アジアの国家、企業、労働者に共通の課題を提起するとし、労働における基本的な原則と権利、雇用、社会的保護、社会対話を基礎に、「国内、地域、世界的に、経済、社会、金融、貿易の諸政策とディーセン� ��・ワークのための政策のより一層の整合性が必要との共通認識」を求めています。また、ILOが後援するグローバル化の社会的側面世界委員会の報告書は、「地球的規模の目標としてディーセント・ワークを推進する国内、地域、国際レベルの対話に向けた有用な刺激材料」であるとの点で合意に達し、昨年12月に国連総会で、今年行われるミレニアム開発目標の見直しに際して、委員会の勧告を考慮に入れることを求める決議が採択された事実を歓迎しました。さらに、ILOに対し、ディーセント・ワーク政策に関する支援を求めている国々に技術協力を提供する上で、援助国及び欧州委員会とのパートナーシップを強化することも求めました。
 第7回欧州地域会議はまた、教育から雇用、仕事から仕事、国家から国家、高齢� ��における仕事から保障への移行といった四つの主要な移行期を確定し、その人生と職業生活において様々な移行期にある人々を支援する政策の開発における新しいアプローチを取り、各国政府に対し、社会的パートナーと協議の上、「国家雇用戦略」の中で若年労働者のニーズに対処するよう求め、政労使三者に対しては、昨年6月のILO総会で採択された、権利に根ざした労働力移動アプローチのための拘束力のない多国間枠組みの開発を支援するよう求め、ILOに対しては、グローバル化と急速に変貌する市場への適応がもたらす競争熾烈化の課題に対処するのを支援するため、企業と労働者にとっての柔軟性と安全保障に関する三者協議を追求するよう奨励すると共に、年金制度の設計と管理運営に関し、地域の政労使に技術� �援を提供し、経験の交流を促進するよう求めました。また、労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言の採択10周年に当たる2008年までに結社の自由、雇用上の平等、児童労働及び強制労働の撤廃に関するILOの八つの基本条約の批准を完了するよう域内諸国に呼びかけました。

 第7回ILO欧州地域会議ブダペストで開幕:経済成長と雇用創出のバランスが取れていない2004年は「雇用の失われた1年」(英語原文)
    2005年2月15日(火)発表ILO/05/09
 第7回欧州地域会議は2月15日の開会式で続く4日間の日程の幕を開きました。ソマビアILO事務局長は開会の挨拶で、生産年齢に達した人々のライフサイクルには、教育から雇用、仕事から仕事または国から国への移動、高齢労働者が直面する移行期といった四つの重要な転換期があるとし、この4段階全てに実効性のある政策には、「意欲があり、能力がある全ての人々に質の高い十分な雇用を創出する経済」というある共通要素が含まれるとしました。そして14日に発表されたILOの年次報告書「Global Employment Trends(世界の雇用情勢)」が、世界経済は堅調な伸びを示しているものの、十分な新規雇用を創出していない点を示したことに言及し、「2004年は雇用の失われた1年」であるとしました。開会式後に開かれたパネル討議において事務局長は、様々な課題の中で一つの共通した願いが登場しつつあるとして、十分に包摂的で公平なグローバル化は全ての人々に機会を創り出すとし、この統治問題が今後の国内外の論議を支配しようと述べました。
 開会式にはハンガリー、ルクセンブルクの首相も出席し、それに続くパネル討議には、さらにカザフスタン、マルタからも首相の出席がありました。「社会対話はグローバル化を生き抜くか」と題するこのパネル討議にはさらに、ペリゴ国際使用者連盟(IOE)会長、モンクス欧州労連(� ��TUC)書記長も参加しました。
 欧州及び中央アジアのILO加盟国50カ国の政府、使用者及び労働者の代表の出席を得て開かれる第7回欧州地域会議は、4年に一度開かれるILO地域会議の一つとして、当該地域の政策形成、優先事項設定を目的とした話し合いを行います。本会議の議長にはハンガリーのガボル・チズマル雇用・労働大臣が選出されました。

 2004年の世界の雇用成長は弱く、欧州の雇用成長は依然低迷−ILO新刊(英語原文)
    2005年2月14日(月)発表ILO/05/08
 ILOは2月14日、現在開かれている第7回欧州地域会議(ブダペスト・2005年2月14〜18日)に提出される補足資料として、毎年発行している「Global Employment Trends(世界の雇用情勢)」の2005年2月摘要を発表しました。報告書は、2004年は確固とした経済成長に関わらず、世界の雇用情勢の改善はわずかだったと結論づけました。2004年に世界の失業率は前年比0.2ポイント減の6.1%、失業者数は50万人減の1億8,470万人と、2000年以降初の改善を示しました。報告書はこれについて、5%という世界の経済成長率が大きな役割を演じたとしながらも、雇用の伸びはわずか1.7%、4,770万人の増に留まっていることはがっかりさせられるとし、就業率は61.8%とほとんど変化がないとします。
 地域別では、2004年に失業率が最も低下したのは中南米・カリブ地域(前年比0.7ポイント減の8.6%)ですが、それ以外ではあまり目立った動きはなく、先進諸国は0.2ポイント減の7.2%、東南アジア・太平洋及び南� �ジアはそれぞれ0.1ポイント減の6.4%と4.7%、東アジア(3.3%)と中東・北アフリカ(11.7%)は変わらず、サハラ以南アフリカは逆に、4.4%のGDP成長率が達成されたにもかかわらず、0.1ポイント増の10.1%となっています。
 報告書は新規雇用創出に加え、今日の政策策定者たちが直面している重要な課題の一つにまともな仕事であるディーセント・ワークの不足をなくすというものがあるとして、この点で、多くの途上国で成長しつつあるインフォーマル経済の労働条件の改善、より公正なグローバル化の達成、若者の高失業率問題の解決、エイズによる大規模な労働者喪失予測に対処する適切な職場内HIV/エイズ方針の確立といった課題に加え、インド洋の地震・津波被災地域における職場、機材、インフラの再建・補修、� �働者の健康に向けた十分な国際援助をできるだけ迅速に提供する必要性があることを指摘しています。
 欧州・中央アジアの失業者数は3,500万人と変わらず、3.5%のGDP成長率にかかわらず、わずか200万人の雇用創出しか達成されておらず、雇用成長に対する経済成長の影響力は2.2%のGDP成長率が0.4%の雇用成長を達成した2003年より悪化していると言えます。ただし、労働生産性は中・東欧とCIS諸国を中心にかなり改善され、最近5年間の年平均伸び率は4%を上回っています。報告書はまた、欧州・中央アジアでは複数の国がインフレ加速や所得格差の拡大を引き起こさずに、低い失業率と高い労働力率を維持することに成功しているように見えると記しています。

 船員の身分証明書に関する新国際労働条約発効(英語原文)
    2005年2月10日(木)発表ILO/05/07
 2003年のILO総会で採択された船員の身分証明書条約(改正)(第185号)が、フランス、ヨルダン、ナイジェリアによって批准された結果、2カ国批准という発効要件を満たし、2005年2月9日に発効しました。1958年の船員の身分証明書条約(第108号)を改正する第185号条約は、世界全体で約120万人に及ぶ船員に安全な身分証明書を発行するための世界的な生体認証(バイオメトリックス)身元確認システムを初めて導入するものです。
 第185号条約は世界貿易の9割近くを手がける輸送船労働者の権利を保障しつつ、世界の安全を高めることを求めるニーズに応えて採択されました。2004年3月にILO理事会は、2本の指の指紋を、船員の身分証明書に印刷される国際標準2Dバーコードに保存される「生体認証テンプレート」に変 換する基準(ILO SID-0002)を承認しました。第185 号条約批准国はこの基準に含まれる要件にあった身分証明書の発行を求められます。
 生体認証による身元確認システムの一つの基本的な要件は「国際通用性」、つまり、ある国で発行された指紋情報が別の国の装置を用いて正確に読みとれることですが、30カ国126名の船員の協力を得て行われた6週間の試験の結果、2004年12月に2つの製品がこの要件を満たしており、船員の身分証明書発行に利用できることが把握されました。
 既に50カ国以上のILO加盟国が検討を求めて第185号条約を国会に提出しています。ILOに寄せられた情報によれば、インド、フィリピン、インドネシアといった主な船員出身国が、批准を検討すると共に実施に向けた計画を練っているとされます。
 詳しくは、ILO海事プログラムのウェブサ イトをご覧下さい。

 第7回ILO欧州地域会議(ブダペスト・2005年2月15〜18日):経済・社会開発を相互に補強しながらディーセント・ワークへの移行を管理する方法について討論(英語原文)
    2005年2月8日(火)発表ILO/05/06
 来る2月15〜18日に、欧州・中央アジアのILO加盟50カ国より約30名の大臣を含む政労使代表が集い、この地域における経済変動とグローパル化の問題について話し合う第7回欧州地域会議がブダペスト(ハンガリー)で開催されます。会議にはハンガリー、ルクセンブルク、カザフスタン、マルタの首相の出席も予定されています。
 若年雇用と学校から仕事への移行、労働市場における柔軟性と安全性の調和、労働力移動の管理、高齢化と年金改革の四つが会議で取り上げられる主な論点となります。会議には事務局長の報告書が討議資料として提出されますが、その第2部に当たる「Managing transitions: Governance for decent work(移行の管理:ディーセント・ワークに向けた統治・英文)」はこの4点を詳細に検討しています。
  • 若者の雇用:若者の失業者数は過去10年間で急増し、現在、世界全体で約8,800万人に達していますが、欧州連合(EU)諸国では若者の失業率は平均14.5%と比較的低くなっています。ただし、EU諸国でも若者が失業する可能性は、学校教育と企業内訓練を組み合わせた「二元制度(デュアル・システム)」を採用しているオーストリア、ドイツ、スイスを除き、より年長の人々の2倍以上に達しています。
  • 柔軟性と安全性の調和:報告書はまた新しい形態の労働市場の柔軟性を雇用の安定性及び労働者の安心感と調和させながら経済グローバル化の中で急速に進化する労働市場を規制する方法について論じ、労働市場柔軟化の試みにもかかわらず、企業当たりの従業員の勤続年数は全体的にあまり変化しておらず(2002年の欧州の平均勤続年数は10年前より0.1年増の10.6年)、パートや契約労働者が急増している国がある一方で、フルタイムの正規従業員数の方が伸びている国もあるとします(例えば3年間でデンマークでは臨時労働者の約65%、オランダでは55%が正社員に転換)。報告書はこれを生産性の伸びを推進する二つの要因の一つ(つまり、業務成績向上の主な要因の一つは仕事を通じて学ぶことにあるため、使用者は労働者を 引き留めようと努力する)に基づくとし、中程度の雇用保護を一貫性のある労働市場政策・制度ネットワークと組み合わせている国が仕事の質と量の点で最もうまくいっていると結論づけています。
  • 労働力移動:域内の外国人労働力人口は総労働力の約4%、2,650万人に達すると推計されます。東欧ではほとんどが旧ソ連邦諸国からの流入であるのに対し、西欧の状況は多様で、例えば、ドイツでは730万人の外国籍人口の大半200万人がトルコ出身であるのに対し、イタリアでは他のEU諸国からの移民はわずか11%で、30%が北アフリカ、27%がアジア出身であるとします。各種の推計を元にすると、西欧には2000年に2,200万人の外国籍人口が居住していましたが、このうち約330万人が非正規の状態にあると推計されます。
  • 高齢化と年金改革:過去50年間に地域の平均余命は10歳伸びて73歳となり、2050年には80歳に達すると予想されます。報告書は就業水準、特に女性と若者の就業水準が上昇し、高齢者に仕事を続ける現実味のある選択肢が提示されない限り、実効性があり、人口圧力に対処できる年金改革は成し遂げられないとし、年金制度内に引退を遅らせるより強いインセンティブを組み込むこと、漸進的な引退を容易にするルール制定、引退に備えて労働者が貯蓄するインセンティブの工夫、得られる選択肢を知らせる広報手段といった各種の措置を提案します。
 なお、2月14日には、欧州及び世界の最新雇用情勢に関する資料が発表される予定です。

 ILO、ネパールに労働組合の権利尊重を要望(英語原文)
    2005年2月4日(金)発表ILO/05/05
 ソマビアILO事務局長は2月4日、非常事態宣言が出ているネパールのギャネンドラ国王に宛てて、国王の命令によって労働組合の権利が抑圧され、集会が禁止されているとの情報を得たことに深い懸念を表明する旨の書簡を送付しました。同国の首都カトマンズでは国際自由労連アジア太平洋地域組織(ICFTU−APRO)が現在会合を開催中ですが、この情報はICFTUから寄せられたものです。事務局長はさらに、ILOの理事でもあるラクスマン・バスネット・ネパール労働組合会議(NTUC)指導者を含み、複数のネパール労組指導者が逮捕の危機に瀕しているとの情報もあるとし、「労働組合の指導者及び関係組合員の身の安全を確保するあらゆる必要な措置が講じられる」ものと信じると記すと共に、社会不穏� ��子を対象とした緊急立法は公共の会議を開催する権利を含み、正統な労働組合の権利を行使している労働者に適用されるべきではないとのILOの確立した立場に国王の注意を喚起しました。

 スポーツシューズ業界は小売、アパレル部門よりも行動規範の義務により良く対応−ILO新刊(英語原文)
    2005年2月4日(金)発表ILO/05/04
 企業の行動規範の大半が直接または間接的に国際労働基準に触れています。ILOがこの度発行した新刊書「Implementing codes of conduct: How businesses manage social performance in global supply chains(行動規範の実施:グローバル・サプライ・チェーンにおける企業の社会的パフォーマンス・マネジメント法・英文・8,000円)」は、基本的労働基準侵害の批判を受けることの多いスポーツシューズ業界がアパレル、小売部門よりも、労働者に優しい行動規範の実施において大きく進んでいることを明らかにしました。著者のイヴァンカ・マミックは、「買い手である企業が真剣な努力を行い、供給者と購入者の関係が最も緊密な部分で進歩が見られる」として、サプライベースが非常に広く、絶えず変化している小売業よりも生産者と多国籍ブランドの関係が非常に緊密なスポーツシューズ業界の方が成績が良いことの理由を示しています。
 米国、欧州、中国等90以上の企業、サプライヤーを訪問し、数百人に及ぶ管理職、活動� ��、政府職員、工場労働者、労働者代表にインタビューを行ってまとめられた本書は、スポーツシューズ業界のこの成功を、ブランド認識と消費者の厳しい目にさらされた結果、より洗練された行動規範実施方法を模索し、資金・人材の効果的な配備を通じた規範遵守努力によって達成されたものと記しています。同書はまた、多国籍企業は「取り締まり」型の遵守モデルから脱し、労働者に自分自身の職場を監督する権限を与えるようなより話し合いに基づいた遵守形態に移行する必要があるとし、これにはトップの決意を伴う明確なビジョン、効果的な研修、供給者レベルですぐに支援を提供できるよう各地に分散したチームの形成を伴うと指摘しています。

2005年1月発表分

 ILO、津波再建のための統合雇用戦略を呼びかける:100万人が生計手段を喪失と推計(英語原文・日本語訳文)
    2005年1月19日(水)発表ILO/05/03


 ILOアジア太平洋総局(バンコク)は1月19日、昨年末に発生したアジアの地震・津波災害復旧のための戦略文書「Earthquake-Tsunami Response: ILO Proposals for Reconstruction, Rehabilitation and Recovery(地震・津波対応:再建、復興、復旧のためのILOの提案・英文)」を発表しました。戦略文書は1月18日から5日間の日程で神戸市で開かれている国連防災世界会議で援助国・機関に向けて提出されます。戦略文書の中で、ILOは暫定的な数値としながらもインドネシアとスリランカだけで100万人近くの雇用が失われたとの推計を示し、人道・再建対応に「雇用集約的な」雇用創出戦略を組み込むよう求めました。
 インドネシアの主要被災地では、漁業、小規模農業、プランテーション農業、未登録の小事業を中心に約60万人が生計手段を失い、被災地の失業率は被災以前の6.8%増の30%以上となり、津波以前のインドネシア全土の失業者数は約970万人であったため、災害の結果失業者数が一時的に最大6%も増加したこと を意味します。スリランカの被災地では、漁業、ホテル・観光業、インフォーマル経済を中心に40万人以上の雇用及び所得源が失われ、失業率は被災前の推計9.2%から20%以上に上昇し、津波以前のスリランカ全土の失業者数は約72万5,000人であったため、被災後の失業者数は一時的に55%以上増加したことになります。ただし、戦略文書は同時に、職場、機械設備、生計手段・雇用の回復を含み、再建、修繕、物理的インフラ交換並びに社会的保護制度(再)整備のための十分な援助と支援が迅速に動員されれば2005年末までに職を失った人々の5〜6割が自分自身及び家族のための生計を得ることができ、約85%の雇用が24ヶ月以内に戻る可能性があるとも記しています。
 災害管理・対応のあらゆる段階において雇用は中核的とするI� �Oの対応戦略の中心要素には、自らが広範な知識と実績を有する雇用集約的インフラ構造再建、地域経済開発を通じた生計プログラム、労働市場の回復と緊急公共職業紹介事業の導入、子どもや若者、女性を含む弱い立場にある集団の保護に向けたプロジェクト、フォーマル経済とインフォーマル経済の双方を対象とした社会的安全網及び社会的保護の整備が含まれています。現在進行中の技術協力プロジェクトも被災地・集団に重点を置くよう方向転換が図られています。
 戦略文書を含むILOのインド洋域地震・津波対応に関する情報はこちらへ。

 ILO三者構成会議で自動車業界の動向を検討(英語原文)
    2005年1月7日(金)発表ILO/05/02
 ジュネーブのILO本部では1月10〜12日の日程で、輸送機器製造業における雇用、社会対話、働く上での権利、労使関係について話し合う政労使三者構成の会議が開催されます。会議討議資料として作成された報告書「部品供給業者に影響する自動車業界の動向(Automotive industry trends affecting component suppliers・英文)」は、自動車業界において部品供給業者の果たす役割はますます重要になってきており、1台の自動車に付加される価値の3分の2、メーカーによっては75%を担当していると報告します。この業界の就業者構成は現在世界全体で、組立メーカーと部品供給業者の割合が平均54:46となっていますが、時に33:66に達し、この方向に向かう傾向があるとします。そして、1999年の世界の部品輸出高に占める途上国の割合はわずか12%だったものの、供給業者の重要性の高まりは新興経済諸国、特に中・東欧、中国、インドに利益し、これらの市場のシェアの増大を招くであろうと記しています。
 カナダ、日本、メキシコなどの国では製品輸出高に占める自動車製品の割合が20%を上回るなど産業の重要性は高く、外注化によ� �先進国企業における労働コストの削減は、絶えず見られるコスト削減、多様化、ジャストインタイムのスケジュールにあわせた納入を求めるプレッシャーと合わせ、供給業者の労働条件に影響を与え、労働力のさらなる柔軟化を要請するであろうと報告書は指摘しています。
 社会対話の分野では、自動車業界は他に先駆けて国際金属労連(IMF)及び現地組合代表と国際枠組み協約(IFA)を締結し、事業関係を継続する条件の一部として、供給業者に結社の自由や機会均等、強制労働・児童労働の廃止といったILOの中核的労働基準の遵守を求めています。

 インド洋地域の地震・津波対応に関するILO事務局長声明(英語原文)
    2005年1月4日(火)発表ILO/05/01
 ソマビアILO事務局長は1月4日、インド洋地域で昨年発生した地震と津波に関し、被災者とその家族・親族に深い哀悼の念を表しつつ、残された人々のための活動におけるILOの役割に関する声明を発表しました。
 ILOは既に国連の各国調査に参加し、ジャカルタ、コロンボ、ニューデリー、バンコクを初めとした各地のILOの事務所が協調対応に加わり、救援努力の支援、長期復興に向けた資金動員を開始している各国当局並びに国連及び国連諸機関に協力しています。
 事務局長は、被災地全域において所得と地域社会が徹底的に破壊され、既に数え切れない人々の暮らしが不確実になっており、この状態はしばらく続くことが確実とした上で、失業の長期化が開発を長期的に妨げる深刻な可能性に懸念を表明す ると共に、被災地域の多くで以前から存在していた慢性的な貧困のさらなる悪化を防ぐためにも速やかに人々を仕事に戻すことが必要とし、仕事、雇用、その他の形態の経済活動の再確立を伴った再建努力を強く求めました。そして、ILOは救援機関でも支援機関でもないが、全体的な復興努力に即時にそして長期にわたり貢献できるとし、ニーズ評価、基盤構造の再建・復旧、住宅供給、地域経済活動及び生計プログラムの活性化といった協力できる分野を示しました。また、親を失った多くの子どもたちも特に懸念されるとし、人身売買や最悪の形態の児童労働の被害者となる危険性に注意を喚起しました。
 事務局長は、ILOがそのもてる専門知識の中でニーズに対処していくには人的・財政的能力の拡大が必要であるとし� �がらも、被災国当局と共に、この大規模な自然災害を被った地域社会が経済的、社会的に復旧するのを支援する国際的な努力において自らの役割を演じる用意があると述べました。ILOは既に、可能な限り、緊急アピールに参加し、被災国政府及び国際機関が準備中の主要被災地域における事業計画に組み込まれるよう提案を提出しており、その基礎となる労働者及び使用者に対する災害影響の緊急評価に着手しています。




ILO駐日事務所お知らせ−2005年

 広報誌「ワールド・オブ・ワーク」2005年第2号発行

 ジュネーブのILO本部コミュニケーション・広報局より年3回発行されている広報誌の一部記事の和訳と日本における関連記事を掲載した日本語版広報誌の最新号(通巻第4号)が完成しました。本号では強制労働に関するILO新報告書を特集しています。また、ILO駐日事務所(旧ILO東京支局)再開設50周年記念事業記事、ILOと日本略年表も掲載されています。

[2005年12月21日掲載]




 ILO歴史写真展(東京・2005年9月5〜30日)・シンポジウム「変化する仕事の世界とILOの現代的意義」(東京・2005年9月27日)報告ページ開設

 ILO駐日事務所(旧ILO東京支局)再開設50周年記念事業として2005年9月にUNハウスで開かれたILO歴史写真展とシンポジウム「変化する仕事の世界とILOの現代的意義」の報告ページを新設しました。シンポジウム講演者のスピーチ、写真展に寄せられたソマビアILO事務局長のメッセージを掲載しています。

[2005年12月16日掲載]




 児童労働ページ開設

 児童労働については従来より、英語等他の言語による児童労働撤廃国際計画(IPEC)のページがありましたが、この度、児童労働の定義、実態、IPECなどILOの取り組みを日本語で紹介した児童労働ページを新設しました。

[2005年12月6日掲載]




 児童労働報告会(東京・2005年9月16日)

 去る2005年9月16日(金)に開かれた、IPEC(児童労働撤廃国際計画)の児童労働問題担当アソシエート・エキスパートとしてILOアジア太平洋地域総局(バンコク)で、アジアを中心に児童労働及び子どもの人身取引の分野で活動する恵木徹待氏による報告会「アジアの児童労働問題について」で用いられたプレゼンテーション資料を新たに掲載しました。

[2005年10月3日掲載]




 仕事における安全と健康のための世界の日(4月28日)

 今年の仕事における安全と健康のための世界の日に際し作成された英文報告書「Prevention: A global strategy」の日本労働組合総連合会による和訳版「予防:グローバル戦略(PDF版・250KB)」を新たに掲載しました。

[2005年5月26日掲載]




 グローバル化と若者の未来アジア・シンポジウム(東京・2004年12月2〜3日)

 昨年12月2〜3日に開かれた厚生労働省、国連大学、ILO共催による「グローバル化と若者の未来に関するアジア・シンポジウム」のウェブページに、新たにシンポジウムの報告書とアジア13カ国のカントリー・レポートを掲載しました。シンポジウムの模様は録画映像(

[2005年5月20日更新]




 インド洋地域の地震・津波に対するILOの対応リンクページ新設

 2004年12月26日に発生したインド洋地域の地震・津波をめぐるILOの対応に関する情報へのリンクをまとめたページを新設しました。

[2005年2月28日掲載]




 新刊:今こそ職場に平等を−日本語版

 ILO駐日事務所では、仕事における基本的原則及び権利に関する宣言に基づく2003年のグローバル・レポート「Time for equality at work」の日本語版を作成し、希望者に有料(1.000円+郵送料)で配布しています。ご希望の方はILO駐日事務所までご連絡下さい。

[2005年2月9日掲載]




 新刊:日本における性的搾取を目的とした人身取引

 ILO駐日事務所が宣言推進国際重点計画内の強制労働廃止特別行動計画と協力し、日本における性的搾取を目的とした人身取引の実態を調査し、国内の対応をまとめた英文新刊書「Human trafficking for sexual exploitation in Japan」を新たに掲載しました。統計データを含む実態部分については、日本語抄訳があります。報告書本体をご覧になりたい方は、こちら、日本語抄訳をご覧になりたい方は、こちらへ。

最終更新日:2006年1月4日 作成者:EU 責任者:SH



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